イチローが古巣マリナーズに復帰(※写真はイメージ)
イチローが古巣マリナーズに復帰(※写真はイメージ)

 まばゆいフラッシュがたかれるなか、黒のスーツに身を包んだイチローは笑顔で登場した。3月7日、米アリゾナ州ピオリアにあるマリナーズのキャンプ施設であった記者会見。「WELCOME HOME」と書かれた画面を背に着席したイチローは、6季ぶりの古巣復帰について、照れくさそうに話した。

「もう一度このユニホームを着てプレーしたい気持ちはあった。(大リーグへ移籍した)2001年にメジャーでプレーできることが決まった喜びとは全く違う感情。とてもハッピー」

 イチローが最後にマリナーズのユニホームを着たのは、12年7月。5年半が経過し、かつて一緒にプレーした選手は数人しか残っていない。その間、自身の立場も大きく変化した。

 前回在籍時は、先発で試合に出ることは当たり前の看板選手だった。27歳だった01年からは、大リーグ記録となる10年連続シーズン200安打も記録した。今回は求められる役割が違う。年俸は12年の1700万ドル(約18億円)から22分の1程度となる75万ドル(約8千万円)だ。

 ジェリー・ディポト・ゼネラルマネジャー(GM)によると、入団交渉が本格化したのは契約からわずか1週間ほど前だった。正右翼手ミッチ・ハニガーが右手痛で調整が遅れ、正左翼手ベン・ギャメルも右脇腹痛で長期離脱。外野手が手薄になったため、イチローに白羽の矢が立ったという。しばらくは左翼で起用される予定だが、結果を出し続けなければ、出場機会が減る可能性は十分ある。

 厳しい状況はイチローも理解している。それでもマリナーズ復帰に「躊躇は全くなかった。考える理由すらなかった」。代走でも、守備固めでもいい。「いまマリナーズが必要としていること、僕が力になれるのであれば、なんでもやりたい。培ってきた全てをこのチームに捧げたい。そういう覚悟です」

 そんな心境になれるのは、復帰までに所属したニューヨーク・ヤンキースとマイアミ・マーリンズでの経験が大きい。外野の併用から始まり、代打では投手が右投げから左投げに代わると、「代打の代打」を送られたこともあった。特に昨季は、調子が良くてもレギュラー3人の状態によっては出場できなかった。主に代打起用での年間215打席、50安打は、12年時の3分の1にも届かない。「悔しい思いをたくさんしてきた5年半。いろんなことに耐える能力が、強くなったと感じている」

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