がんになったら、余命宣告は受けたいですか?(AERA 2018年2月12日号より)
がんになったら、余命宣告は受けたいですか?(AERA 2018年2月12日号より)
民間療法をどう考えていますか?(AERA 2018年2月12日号より)
民間療法をどう考えていますか?(AERA 2018年2月12日号より)

 もし自分や家族ががんと診断されたら、どうしたらいいか悩む人は多いだろう。では医師は、自分ががんになったら、どうするのか。AERAは、20代から60代までのがんの診療経験のある現役医師553人にアンケートをした。余命宣告や民間療法などについて、医師の本音を聞いた。

【アンケート結果】民間療法をどう考えていますか?

 一喜一憂してしまいがちな「余命」についても、医師の見方は冷静だ。余命は平均値に過ぎず、「7カ月の余命」には数週間も1年以上のケースも含まれるという。そのうえで、85%が「余命宣告を受けたい」と回答した。

 時に患者や家族が頼り、悪徳商法も問題になる民間療法。「どう考えるか」という質問には、厳しい声が目立つ。

 否定的な医師らが口をそろえるのは、民間療法に「エビデンス(臨床結果などの科学的根拠)がない」という点だ。医師は臨床例で対処するトレーニングを積んでいる。「治療効果があるなら、標準治療や保険に組み込まれるはず」というのだ。

「うそっぱち」(内科・40代・女性)、「人の弱みにつけ込むインチキ商法」(内科・40代・男性)、「百害あって一利なし」(内科・50代・男性)という辛辣(しんらつ)な表現も並ぶ。背景に、患者が不利益を被った経験がある。

病院での治療より民間療法を崇拝し、治療の妨げになった」(内科・40代・男性)、「悪徳民間療法にだまされて不幸な転帰になった患者を見てきた」(内科・60代・男性)などと訴える医師は少なくない。

 一方、「有効」と答えたのはわずか2%。「場合によっては有効」と回答した人は29%で、その大半が「プラセボ効果」「患者が死を迎えるとき後悔せず、やるだけのことはやったと思えるなら」「イワシの頭も信心から」などといった、心理面での効果に言及したものだ。

 東邦大学医療センター緩和ケアセンター長の大津秀一医師は言う。

「患者も家族も、わらをもすがる思いなので、頭ごなしに否定するのは逆効果の場合もある。『望むならどうぞご自由に』という医師もいますが、僕は『お勧めしない』ときちんと伝えるほうです。特に、お金が異常にかかる場合はよくありません」

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