いま、優秀な若手人材が、銀行から転職マーケットに流出している(※写真はイメージ)
いま、優秀な若手人材が、銀行から転職マーケットに流出している(※写真はイメージ)

 銀行がかたくなに守ってきた日本型雇用が崩れ始めた。行員は、残るか、転職市場に打って出るかの選択を迫られている。

 その男性が、勤めていたメガバンクに辞表を提出したのは、花形部署である「本店営業部」への異動目前だった。20代後半。周囲から「エリートコースに乗った」と言われていたが、決心したのは「将来に希望が持てなかったから」だという。

 終身雇用・高給と引き換えにすべては会社の意のまま。上司、先輩には「絶対服従」。そんな銀行のカルチャーに、違和感を覚えていた。ドラマ「半沢直樹」のように上司に物申すなどありえない世界。

「週末のゴルフの誘いを断れば、翌週の支店長は異様に厳しくなる。支店長に気に入られないと出世できないので、飲み会で部下たちは、競い合うように店のスタッフから皿を奪い取り、上司に料理を取り分けていました」

 仕事でもチャレンジすることより、失敗しないことが何より大事という究極の減点主義。一回でもバツがつけばおしまいだ。

「銀行の仕事では主体性は求められないんです。行内で評価される『優秀さ』は、外では通用しない」

 出るならいまがチャンスと外資系企業に転職した。

 昨年、メガバンクからベンチャーに転じた別の男性(30)は、年収が1千万円を超えると、それに執着して身動きができなくなるからと決断した。営業では大企業を担当し、昇格試験にも合格。キャリアは順調だったが、やはり将来が不安だった。銀行内の業務は非効率的な事務作業が多く、やるべきこと、やりたいことが進まない。意思決定のスピードも驚くほど遅い。こんなビジネスをやっていては、時代についていけないと感じた。

 3、4年ごとに転勤を繰り返す人事システムにも納得がいかなかった。5年後、10年後、自分がどこで誰とどんな仕事をしているのか予想もつかない。

「僕は自分の意思でキャリアをデザインしたかった。転職で年収は下がりましたが、満足しています。嫌なことに耐えて高い給料をもらうより、給料が安くても自分でキャリアをつくっていけるほうが、納得感があるし、楽しいです」

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