こうした状況に軍関係者も危機感を募らせる。米共和党の重鎮で元海軍将校のジョン・マケイン上院議員は9月に開かれた米連邦議会の軍事委員会で、過去3年間の戦闘で死亡した米軍人44人に対し、訓練中に185人が亡くなったことを明らかにし、「訓練中の事故で亡くなる米軍人のほうが、戦闘で命を落とす数よりも多い」と述べた。

 事故が増えている大きな要因は、米国が財政再建を進めるためにオバマ政権が13年に発動した歳出の強制削減措置にある。年度ごとに10兆円規模で予算を削り、10年間の削減額は100兆円に上る。その半分は国防費だ。結果として、戦費込みの国防予算はピークの10年度から最大で2割ほど落ち込んだ。

 元海兵隊パイロットのカール・フォースリング氏は、国防予算が圧迫され続けたために訓練飛行の時間が減り、機材にしてもCH-53のような古いものを使い続けるか、新しい機体でも十分なメンテナンスが受けられていないと指摘する。

 一方、こうしたことは十分に予見できたと話すのは、米国在住で軍事社会学者の北村淳氏だ。

「強制財政削減を始めた当初から軍の事故は増えると言われていました。訓練や人が減った半面、北朝鮮情勢の緊張に伴って出動回数は増え、米軍全体が過労状態に陥っています。トランプ大統領が軍事費を増やそうとしていますが、強制的な財政削減を止めない限り大幅な回復は望めず、事故はますます増えるのではないでしょうか」

 そのうえで、事故を減らすために日本政府が米軍機などの整備を請け負うことも考えるべきだという。

「米軍も事故が増えて困っている。それなら技術力で信頼を得ている日本が代わりに整備すると提案すればいいのです。ところが米軍関係者に聞くと、日本政府からそうした提案はさっぱりないという。日米同盟の強化は、何も武器を買うだけではないのです」

(ジャーナリスト・桐島瞬)

AERA 2018年1月15日号