小栗が起用された2007年、当時は蜷川幸雄演出舞台の常連になり始めていた頃だった。節丸の読みは当たり、小栗の番組は女性のみならず、男性リスナーからも支持された。この放送が、今年4月から初のレギュラーラジオ放送で話題となった菅田将暉起用の道筋をつくった、とも言える。

 番組からは数々の伝説も生まれている。鴻上尚史がリスナー200人と民族舞踊のジェンカを踊ったのもその一つだ。このイベントは数回開催され、あるリスナーの東大受験に密着し、その合格発表の場でこのリスナーを先頭に踊ったことも。鴻上によると、このリスナーとは以降結婚式に招かれるなど30年以上も交流が続いている。

 伝説は番組の枠にとどまらず、「都市伝説」にまで発展したものも。笑福亭鶴光やタモリの番組で取り上げられたことで話題になった「なんちゃっておじさん」だ。両手を頭の上につけ「なーんちゃって」というポーズを取るというこのおじさん、真偽のほどは分からないが、番組には大量の目撃情報が寄せられた。

「噂がホンマになっていく。その連帯感が、深夜放送の面白さ」

 と鶴光は言う。

 東京だけで深夜帯のシェア9割を誇っていた鶴光の番組。強大な影響力があったからこそ、それが裏目に出てしまったことも。エロトークが各地のPTAの反感を買い、「放送を中止せよ」とスポンサー商品の不買運動にまで発展した。これはさすがにまずいと、1カ月間エロを封印。鶴光が詩や伝記を朗読する「模範的」な放送で、事なきを得たという。

 これからも番組から生み出されるであろう、スターや伝説が楽しみだ。(文中敬称略)(編集部・市岡ひかり

AERA 2017年10月30日号