「英樹の武器は、アプローチとパター。アプローチでピン近くに寄るからパターが入るし、それがリズムを生んでいる。それにパッティング時の平衡感覚がすごく良い。だから、いったん入り始めると、ポンポンポンポン入り始めちゃうんだよ」


 米ツアーの16/17シーズンで既に2勝を挙げている松山は、四つあるメジャー大会に万全の体調で臨むため、出場試合をより慎重に選んでいる印象がある。本人が積極的に話すことがないため、あまり報道されていないが、今季の松山は首やヒジの痛みなど小さなケガを抱えながら戦ってきた。米ツアーに本格参戦した14年からトレーナーを務める飯田光輝が言う。

「今年は故障が続く年かなと覚悟しています。トレーニングとケアと練習と、いろんなものを、バランスを考えて日々のスケジュールを組んでいます」

 これまで米ツアーやメジャー大会に挑んできた日本人ゴルファーが、まずぶち当たった壁が、海外勢との体格の差。つまり、“飛距離”の問題だ。

 ところが、人気選手であるリッキー・ファウラーや若手の飛ばし屋で知られるジョン・ラームと回った予選ラウンドでは、ほとんどのホールで松山のショットは彼らを上回っていた。今シーズンの松山はここまでパー5の平均スコア部門で全体1位。むしろ飛距離が松山のゴルフのアドバンテージとなっているのだ。飯田はさらにこう続けた。

「下半身を重点的にトレーニングしてきて、ちょっとずつ飛距離が伸びてきていることはデータでも証明されています。ただ、いくら周りが“飛んでいる”と思っても、本人にそういう意識がないのであれば、彼が納得できる飛距離にまで伸ばす努力をトレーナーとしても続けなければならないと思っています」

 次なるメジャーは、7月20日から始まる全英オープンだ。その日は、確実に近づいてきている。(文中敬称略)

(ノンフィクションライター・柳川悠二)

AERA 2017年7月10日号