ディスカッションのテーマもこの日の「AI」のように、ホットな時事問題が多い。

「生徒が興味を持って考え、議論しやすいテーマを提案できるよう、私自身もアンテナを磨いています」(同)

 続いて見せてもらったのは、3年生の数学の授業。宿題だった問題を解いた過程を、生徒が黒板一面に書き出し、なぜ答えがこうなったのかを発表する。

と、すかさず他の生徒から疑問点が提示されたり、別の解法が紹介されたり。そんな生徒と生徒のやりとりを繰り返しつつ、2問の問いをみんなで時間をかけて掘り下げていき、1コマの授業が終了した。

●仮説を共有して反論

 もうひとつ、2年生の化学の授業もユニークだ。この日のテーマは「メタンはなぜ正四面体なのか?」。メンバーを入れ替えながらグループで話しあい、各グループの仮説は共有と反論が繰り返される。教科書などを資料にしたり、先生が提示するYou Tube動画を、それぞれのスマホで見て参考にしてもいい。

「答えのあることは生徒1人でも調べられます。でも答えのないことを力を合わせて解いていく場が学校なんですよね」と化学担当の野澤優太教諭。

 杉山剛士校長も「目指してほしいのは、失敗を恐れないタフさと、人を思いやることができるやさしさをあわせ持ち、『自走する』人。これらの資質は、来たるべきAI時代を生き抜く術にも当てはまる。これには協調学習が、少なからず効果を上げていると感じています」。

 どの授業も、主役はひとりひとりの生徒だけに、参加していない生徒は皆無。見せてもらった3コマの授業のほとんどの時間、全員が顔を上げ、下を向く生徒を見かけなかったのも印象的だった。(ライター・福光恵)

AERA 2017年6月5日号