「ひまわりの花は前向きなイメージ。だけど、葉加瀬さんの曲のひまわりは、それだけじゃなくみんなにパワーを与えてくれます。みんなを明るくしてくれる花として作詞しました」

 同じく詞を応募した、福島県二本松市に住む佐藤啓人(ひろと)さん(17)は、「故郷」について改めて考えた時、頭に浮かんだ言葉を紡いでいった。《ひまわり畑に寝転んで、友達と見上げたあの青空が好きだった》と書いた。佐藤さんは言う。

「故郷にはいい思い出も嫌な思い出もある。それらを含めて、故郷を忘れないでほしい」

 こうして集まった詞をもとに、V6の「愛なんだ」など数々のヒット曲を手掛ける、作詞家の松井五郎さんが詞をつけた。

「震災を体感した心象風景のようなものを書く子どもも多く、心を揺さぶられました」

 作詞する際、合唱曲なので、声を合わせた時にきれいに聞こえる音は何か、声を伸ばした時にきれいに聞こえる音は何かも考えた。さらに、ひまわりのように明るく希望をもって生きていこうという思いと、「ひまわり」が生まれた背景も意識して作詞したという。

 完成した詞は、3番まである。《悲しみに負けないように 昇る太陽の方へ》《顔を上げれば 誰もみんなひまわりになれる》

 と、心にストレートに届く。

「聴いてくれたみんなの歌になればうれしい」(松井さん)

 冒頭で紹介した笛木さんは、「ひまわり」の《悲しみに負けないように》のフレーズが好きだ。歌うと、「よし、がんばろう」と勇気が湧くのだという。

「自分へのエールでもあり、同じように被災した人たちへのメッセージのようにも感じます」

 歌は、未来をつくる原動力でもある。

●前に進んでいきたい

 郡山東高校合唱団の部長、田彩加(あやか)さん(17)は、こう話す。

「言葉で伝えるより歌のほうが伝わるものは大きいと思います」

 震災で郡山市内の自宅は無事だったが、放射能が心配で1カ月近く外出できなかった。学校が再開しても、真夏でもマスクをつけて過ごした。テレビやネットではさまざまな情報が飛び交い、何を信じていいのか分からなかった。今も「震災」と聞くと、あの頃の不安な気持ちで過ごした日々が蘇る。今日ステージを見にきてくれた多くの人も、きっと同じ思いのはず。

次のページ