郡山市民文化センターで開かれた「復興支援音楽祭 歌の絆プロジェクト」。バイオリニストの葉加瀬太郎さんらと郡山市内の高校の合唱団、そして観客とが一体になった (c)朝日新聞社
郡山市民文化センターで開かれた「復興支援音楽祭 歌の絆プロジェクト」。バイオリニストの葉加瀬太郎さんらと郡山市内の高校の合唱団、そして観客とが一体になった (c)朝日新聞社
松井五郎さん(59)/作詞家/阪神・淡路大震災を機に、被災地の力になりたいと思うように。「子どもや大人、すべての被災した人たちに寄り添える歌を書いていきたい」(撮影/長谷川唯)
松井五郎さん(59)/作詞家/阪神・淡路大震災を機に、被災地の力になりたいと思うように。「子どもや大人、すべての被災した人たちに寄り添える歌を書いていきたい」(撮影/長谷川唯)

 歌の力で被災地を応援する「復興支援音楽祭」。今年は、一流アーティストに加え、「音楽都市・郡山」から実力校2校が出演。生徒たちはさまざまな思いを抱いて、ステージに立った。

 復興への願いと祈りを乗せた歌声が、ホールに響いた。

「最初は緊張したんですけど、歌っている途中はすごく楽しかった」

 安積(あさか)高校混声合唱団の部長、笛木アレンさん(17)は、ステージを終えると声を弾ませた。

 春まだ浅い3月29日、福島県の郡山市民文化センターで開かれた「復興支援音楽祭 歌の絆プロジェクト」(主催・三菱商事、福島放送、朝日新聞社)。東日本大震災からの復興を音楽で後押しする音楽祭で、今年4回目。今回ステージに立ったのは、「音楽都市・郡山」の安積高校と郡山東高校の合同合唱団計51人。そこに、被災地支援を続けるバイオリニストの葉加瀬太郎さん、ピアニストの西村由紀江さん、チェリストの柏木広樹さんら、一流アーティストが加わった。葉加瀬さんたちは、昨年に続いての出演。

 高校生は復興支援ソング「花は咲く」などを合唱し、葉加瀬さんたちは楽器を演奏。高校生たちによる抜群のハーモニーにつづき、葉加瀬さんの代表曲「情熱大陸」の演奏が始まるとステージの熱気は最高潮に達し、客席は総立ちに。約2時間に及んだ音楽祭は、何度も大きな拍手に包まれた。

●悲しみは癒えなくても

 ステージ終了後、楽屋前。葉加瀬さんは、音楽祭が成功したかどうかの問いに、大粒の汗を流しながら楽しそうに話した。

「それは僕たちには決められないけど、手応えはあるね」

 東日本大震災から6年──。被災地を歩くと、復興は進み、街はどんどんきれいになっている。しかし、震災が人々の心に残した爪痕は深い。癒えぬ悲しみ、止まったままの時間。この日、参加した生徒たちも、さまざまな思いでステージに立った。

「お母さんに、いままでの感謝の気持ちを込めて歌いたい」

 郡山東高校合唱団の坂本綾乃さん(17)は本番前、そう話した。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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