●「あんた、ストーカーね!」

──でも、優しく接したところで、なかなか感謝されることのないお仕事ですよね……?

榎本:10年近くやっていて、お客様に感謝されたのは片手で数えるほどです(笑)。「信用に傷がつく前に連絡してくれてありがとう」って。あとは、「殺す」と言われたり、ストーカー呼ばわりされたり……。

──ストーカー?

榎本:基本的に督促の際には本人以外に、こちらの会社名を名乗れません。携帯電話にかけても連絡が取れず、自宅にかけるときは「榎本ですが、◯◯さんいらっしゃいますか?」とお話しするんです。それで、電話口でお客様の奥様らしき人と「どのような関係の方ですか?」「いや、仕事の関係で……」と、何度かやり取りしていたら「あんた、ストーカーね!」とののしられたんです(笑)。

武田:会社名を本人以外に告げられないせいで、私はヤクザの事務所で大変な目に遭いました。債務者は組の事務所を所在地にしていたんです。取り立てに行ったら、いきなり組長の部屋に通されて、その債務者を呼んだうえで、「あなたはどういった関係の方なんですか?」と聞かれました。でも、本人以外に会社名を名乗れないし、「借金の返済の件で……」とも言えない。すると、組長が債務者に「この人とは、どういう付き合いだ?」って聞く。けど、債務者はあちこちから“つまんで”て、私がどこの取り立てなのかわからないんです。それであたふたしていると、私の目の前で組長が債務者をボコボコにし始めた。結局、4時間ぐらいリンチしているところを見させられました。ビビって会社名を言っていたら、「規則違反だろ?」とつけ込まれていたかも。実際、それでフロント企業への不正融資の片棒を担がされたサラ金もありました。

金子:消費者金融ならではのお話ですけど(笑)、そういう細かいルールがこの業界にはいっぱいある。年金の収納勧奨をやっているサービサーが多くありますが、年金の未収はサービサー法に定められた債権の対象外。だから、「払ってくれ」という言葉は使えないんです。「未納分についてご相談させてください」としか言えない。もし、「日本年金機構から委託を受けて」という電話がかかってきたら、「払えって言ってるのか?」と言ってみてください。絶対、「いや、ご相談のお電話で……」としか言ってきません(笑)。

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