かつては自宅まで集金にくる消費者金融も多かった。「多重債務者の家は昼も光が漏れないように窓がカーテンで覆われていた」(元消費者金融マン) ※イメージ写真
かつては自宅まで集金にくる消費者金融も多かった。「多重債務者の家は昼も光が漏れないように窓がカーテンで覆われていた」(元消費者金融マン) ※イメージ写真

 非正規社員、失業、高齢化、病気――。いま、奨学金や住宅ローンなどの借金返済に困る人が増えている。明るい未来を担保にして借金が出来る時代は終わりつつあるのか。AERA 2017年4月3日号では「借金苦からの脱出」を大特集している。

 借金を取り立てる側の人々は、債務者とどのように向き合ってきたのか?“督促OL”や元消費者金融マンら、取り立てのプロが一堂に会した。

*  *  *

──まず、最近の“取り立て屋事情”について教えてください。

榎本:私は信販会社のコールセンターでキャッシングの返済を滞納している方などへの督促業務を担当しているのですが、ここ十数年でガラッと働く環境が変わりましたね。以前は、窓もない一室に電話を並べて毎時60本も督促の電話をかけ、夜9時からは督促のお手紙を書いて、日付が変わる前ぐらいに帰宅していました。電話口でお客様から罵倒されるのも日常茶飯事なので、どんどん人が辞めていく職場でした。けど、ブラック企業が社会問題になってからは、オペレーターのメンタルケアに力を入れる企業が増え、PC上でトークスクリプトを見ながら督促の電話をかけるかたちになり、大幅に業務が効率化されました。ただ、それでも人手不足は深刻ですが……。

武田:私が以前、働いていた大手消費者金融は毎年1千人採用して、1千人辞めていきました(笑)。今、私が担当している年金の収納業務は採用希望者が多く、辞めていく人が少ない。この仕事は年金制度というシステムを支えるために必要な業務じゃないですか?だから、定年退職された方などが、「お国のためにやりたい」と時給1千円程度で頑張ってくれる。

●金融庁から「社長呼ぶぞ」

金子:取り立てそのものはやりづらくなりましたよね。私が家賃滞納の回収を行っていた十数年前は、平気で滞納者の名前をマンションの掲示板に貼り出したり、鍵を交換して追い出してしまったりすることも少なくなかった。でも、2000年代から追い出し行為に対する裁判があちこちで起こるようになって、強引な回収はしにくくなりました。まあ、その点は消費者金融のほうが厳しいと思いますが。

武田:かつては自宅や職場にも平気で取り立てに行っていましたが、06年にアイフルが執拗な取り立て行為で全店業務停止処分を食らいましたよね。その流れで貸金業法が改正されて一気に締め付けが厳しくなりました。少し強引な取り立てをやったら、すぐに苦情が入って、金融庁から「改善しないと、社長呼び出すぞ!」と本社に電話が入る……。

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