さらに、大統領が掲げる公共投資の拡大やシェールオイル・ガスなど資源開発が進めば、コマツなどの工作機械メーカーにビジネスチャンスが到来。技術大国ニッポンにとって、追い風となることは間違いない。

 実際に独自の技術を武器に、チャンスをつかむ企業も出てきた。

●偽ニュースが商機に

 2016年12月、大阪市のITベンチャー「テックビューロ」に、ある大型の案件が舞い込んだ。相手は日本でもよく知られた、米国の有力メディアだ。事の発端は、大統領選挙期間中にまでさかのぼる。

「フランシスコ法王がトランプ支持を表明した」「ヒラリー候補がISに武器を売っていた」──。こんな目を疑う偽ニュースがSNS上を飛び交い、勝敗の行方を大きく左右した。

 さらに、両候補者や有名セレブの名をかたる、ツイッターのなりすまし行為も横行。大統領をはじめ、政権幹部のツイッターでの発言が、世界情勢や株価を左右する今、なりすましは愉快犯ではすまされない、国家をゆるがす危険性さえある。
 この事態に米政府も動き出した。メディアなどネットサービスを担う企業に対し、信頼性を高める仕組みを構築するよう働きかけを強めたのだ。

 そこで白羽の矢が立ったのが、テックビューロが開発するブロックチェーンと呼ばれる最先端のデータ記録技術を応用した、本人認証システム。入力したデータが高度に暗号化され、同時に複数のパソコンに共有されることで、第三者からの改竄を防ぐことができる。

「シリコンバレーのマネジャーが導入に向けて話を進めている最中。実現すれば、米国の他のメディアからも引き合いが増えると思います」(朝山貴生所長)

 もともとブロックチェーンは、仮想通貨の基幹技術として導入されているが、日本では活用は道半ばだ。今回の件を追い風に、金融以外の分野でも活用が広がると業界全体も色めき立つ。

 経済産業省の16年の報告書では、国内での市場規模は67兆円にも上ると期待されている。同社と共にブロックチェーン推進に取り組み、昨年4月にブロックチェーン推進協会を立ち上げた、インフォテリアの平野洋一郎社長は、

「日本経済の不透明性が高まれば、クラウド化で業務を効率化させるようなシステムの需要は高まる傾向にある。そういう意味でも、トランプ政権は追い風ですね」

 と期待する。

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