ブロックチェーンだけではない。トランプ大統領の掲げる金融規制緩和の流れが、日本のフィンテック全体を加速させるのではとの期待も高まる。

 ネット広告大手の「ボヤージュグループ」では今年1月、フィンテックの推進を目指す投資ファンド「SV-FINTECH Fund」を、シリコンバレーのベンチャーキャピタルと共同で設立した。

●米出資額の1%以下

 日本のフィンテックは、欧米諸国と比べ、大きく後れを取っている。経産省のデータによると、フィンテックへの投資額は14年度、米国が1兆2千億円なのに対し、日本は約50億円。15年には100億円超と急激に伸びたものの、足元にも及ばない。

 銀行法の改正により、フィンテックへの出資に関する要件が緩和されるなど、日本でも追い風が吹き始めているが、トランプ旋風がさらにこの後押しになるのではと、マイナス金利で疲弊した金融業界も沸き立つ。

「出資先の金融機関からもフィンテックに対する期待が高まっているのを感じます。コラボしながら、日本流のフィンテックのあり方を模索していけたら」と、宇佐美進典社長は期待する。

 一方、保護主義的な政策により、米国に対する投資やビジネスはさらに加速することが予想される。日本企業の新たなリスクとなるのが、米国の司法制度とどう付き合うかだ。

 特に近年、多発するのが、反トラスト法による国際カルテルの摘発。ブリヂストンや矢崎総業、デンソーなど、自動車部品メーカーが米司法当局に次々と摘発され、数百億円もの罰金を支払う事態に至っている。

 次のターゲットはどこか。日本企業が恐々とする中、東京都港区の「AOSリーガルテック」では、年明け以降、グローバル企業を中心に、訴訟対策のためのソフトが売れ始めているのだという。

●素早い証拠提出がカギ

「日本ではなじみがない制度に戸惑い、証拠提出に時間がかかり、事態が悪化してしまう例が後を絶ちません」

 そう語るのは、同社の佐々木隆仁社長。同社が販売しているのは、訴訟で証拠として示すため、削除されたメールなどのデータを復元するソフトだ。

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