企業が抱えるリスクは、フォードやトヨタ自動車のように、名指しで批判されることだけではない。思わぬところで反トランプ派と支持派の攻防に巻き込まれ、不買運動にまで発展するケースも多発している (※写真はイメージ)
企業が抱えるリスクは、フォードやトヨタ自動車のように、名指しで批判されることだけではない。思わぬところで反トランプ派と支持派の攻防に巻き込まれ、不買運動にまで発展するケースも多発している (※写真はイメージ)

 ドナルド・トランプ氏がアメリカ大統領に就任して約1カ月。新大統領は意に沿わない企業やメディアをツイッターなどで厳しい言葉で恫喝してきた。グローバル企業は戦々恐々としている。トランプ政権で世界はどう変わるのか。AERA 2017年2月27日号では、「トランプに勝つ日本企業」を大特集。

 ドナルド・トランプ氏がアメリカ大統領に就任して約1カ月。新大統領は意に沿わない企業をツイッターなどで厳しい言葉で恫喝してきた。グローバル企業は戦々恐々としている。トランプ政権で「勝てる」企業の条件とは──。

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「Breaking News!」

 ニューヨークのホテルでテレビをつけると、画面上にはひっきりなしに、目を疑うようなニュースが速報で飛び込んでくる。「中東など7カ国からの入国禁止」「メキシコ国境にグレートウォールを建設へ」「イスラム国(IS)殲滅(せんめつ)計画」──。

「まるで戦時中みたいだ」

 2月上旬、トランプ新大統領後の現状を知ろうと現地メディアや企業PR関係者へのヒアリングのために米国を訪れていた、コミュニケーション専門家の鶴野充茂さんは、普段の米国とは明らかに違う異様な雰囲気に、そう感じずにはいられなかった。

 対立姿勢をあらわにするメディアと、挑発するように過激発言を繰り返す大統領。現地メディアは、大統領や政権幹部のツイッターを24時間体制で「監視」している。米国民はショッキングなニュースに一日中さらされ、憂鬱(ゆううつ)な気分にさいなまれる「トランプ鬱」を訴える人さえ出ているという。

 鶴野さんは、コロンビア大大学院時代の友人に聞いてみた。

「いったい、米国では今、何が起きているんだい?」

 友人は肩をすくめて答えた。

「君のほうこそ、教えてくれよ」

 米国にいる自分たちすら、今何が起きているのか、理解できないのだから、と。

 意に沿わない人物やメディア、企業などを厳しい言葉で恫喝するトランプ大統領。ツイッターを通じ、ひとたび発言すれば、一瞬で2500万人ものフォロワーに伝わり、さらにリツイートされて、世界中に拡散される。

 企業が抱えるリスクは、フォードやトヨタ自動車のように、名指しで批判されることだけではない。思わぬところで反トランプ派と支持派の攻防に巻き込まれ、不買運動にまで発展するケースも多発している。

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