「薬は化学物質を体内に入れるので諸刃の剣。コンビニで食品を買うのと薬局で薬を買うのは全く違います。市販薬を買うときは、まず薬剤師に相談をしてほしい。市販薬との付き合い方はすでに変わってきているのです」

 と山浦さんは言う。

 薬局との付き合い方も変わりつつある。

「風邪や体調不良でも、過去の経験から市販薬で良くなったというものがあれば、まずは薬剤師や登録販売者に相談してみてください」

 そう話すのは、薬剤師で日本OTC医薬品協会顧問の西沢元仁さん。

 市販薬を服用したり休養したりして1週間ほどでよくなる体調不良は、本来なら医療機関にかかる必要はない。だから代わりに、薬局へ──。

●市販薬で税金も控除

 こうした背景にあるのが、政府が成長戦略として推進する「セルフメディケーション」だ。普段から自分で健康を管理し、軽い体調不良なら薬剤師などを活用して自分で治すことを推奨している。

 来年1月からは、特定の市販薬を年間1万2千円以上購入した世帯への医療費控除が始まる。風邪薬や胃腸薬、水虫薬などスイッチOTC医薬品が対象になる予定だ。薬のレシートは捨てずにとっておきたい。

 さらに、「かかりつけ医」と同じように、「かかりつけ薬剤師」を普及させようと、今年4月の診療報酬改定で報酬が新設された。一人の患者が受診している医療機関や服用している薬を把握した上で指導し、重複処方などを防ぐのが狙いだが、調剤だけでなく市販薬も同じ薬剤師に相談すればいいだろう。

 今年10月からは「健康サポート薬局」の届け出が始まった。研修を受けた薬剤師が24時間対応したり、一定以上の市販薬の品ぞろえがあったりする、といった条件をクリアした薬局が名乗ることができる。

「全国の薬局のうち、約3割は届け出をすると見られています。自分に合った薬剤師や薬局を選ぶときの一つの目安になるでしょう」(山浦さん)

 医薬分業として医療機関の周辺で主に処方薬だけを扱う「門前薬局」が一時増えたが、最近では、いつでも健康の相談を気軽にできる、「昔ながらの街の薬局」の姿へ戻りつつあるのだ。

 横浜市金沢区で75年にわたって開業する小田薬局の代表で薬剤師の小田兵馬さんは言う。

「かかりつけ薬剤師を見つけるのは、恋人をつくるようなもの。薬局でもドラッグストアでも、自分に合う、普段から付き合いができるような薬剤師をひとり見つけてほしい」

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