●日本人は薬の知識不足
しかし、薬局や薬剤師を活用したセルフメディケーションには課題も多い。
日本医療政策機構理事で医師の宮田俊男さんは言う。
「医師と薬剤師の本来の役割を考えれば、セルフメディケーションを伸ばしていく意味はあります。ただし、消費者リテラシーの向上も必須です」
ある製薬企業関係者は、日本の環境を「特殊」だと感じている。医師にかかることが当然で、薬も医師に頼り切っている人が多いのではないか。
「米国に赴任していたときは、最寄りのクリニックまで車で30分以上かかるところも多く、治療費も高額という環境でした。近所の年配の女性でさえ、薬の副作用や飲み合わせについて一定の知識を持っていました。日本の消費者は、『市販薬なら安全だろう』と思い込み、作用と副作用を適正に理解していない節もあります」
一方、小田さんはこう言う。
「薬の知識をゼロから自分で勉強する必要はありません。薬剤師を『使って』ほしい。わからないことや知りたいことを薬剤師に積極的に聞いて、メモをとるようにしてください」
医療機関を受診すべきか迷うときもあるだろう。そういうときも、薬局が医療機関への橋渡しになる。
小田さんが以前、一日600~800人の利用者が訪れる薬局店舗で調査をしたところ、来店客のうち、市販薬を買っていたのは2~3割で、やけどやけが、肌のかぶれといった人が多かった。そのうち約1割には、医療機関の受診が勧められたという。
●血液検査も薬局で
薬局と医療機関の連携は、健康管理でもはじまりつつある。
東京都台東区の主婦(61)は、健康診断でLDL値が高いと言われたことが気になっていた。歯科医や花粉症の治療で調剤を利用していた近所のみどり薬局を訪れたところ、その場で簡易検査ができると教えてもらった。
薬剤師の説明を受け、渡された採血キットで指先から自分で採血し、測定器にかけて約6分。結果は正常値内で、ほっと一安心。