開発中のシステムでは、MRIの検査画像をもとに、画面上であたかも脳を輪切りにしたようにして脳全体を見ることができる。システムが脳動脈瘤を疑うと、自動的に瘤に赤色がついて、アラートを鳴らす。医師は自身の目で画像を見るが、アラートによって見落としに気づくというわけだ。

 8月末、試験中のシステムを使って、北村医師はその精度に驚いたという。

「ダブルチェックとして使えますね。偽陽性(誤って脳動脈瘤だと判定)が少なくなるのがいいです。すぐにでも診断に取り入れたいと思っています」

 エルピクセルの島原佑基・代表取締役は言う。

「画像を見分けるのは、そもそも人よりもコンピューターのほうが得意です。脳動脈瘤の検出では、すでに医師と同じくらいの精度で検出できるようになっています」

●AIがうつ病判定

 AIは精神疾患の診断と治療も大きく変えていきそうだ。うつ病などの精神疾患は、重症度の評価は医師の主観によるため、かなり曖昧だ。血液検査などで症状を客観的に量ることもできない。疾患や重症度を、基準に基づいて分類するのが診断の基本だが、精神疾患の場合はそれが困難だ。

 精神科医の岸本泰士郎医師は昨年、機械学習などのAIを活用して、精神疾患の重症度を客観的に数値で分析する試みを始めた。岸本医師が専任講師を務める慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室などが参加している。

 まずは、うつ病と躁うつ病について、コンピューターが重症度を判定できるようにするのが狙いだ。そもそも精神科医は「表情の変化が乏しい」「体の動きが鈍い」「声が低くハリがない」などの患者の見た目や声で、症状や重症度を判別している。それを、コンピューターで判定できるようにするというのだ。

 患者と医師の面談中に、カメラやマイクなどで患者の表情や声のデータを取得する。そのデータを機械学習でシステムに学習させ、システムを作り込む。高い精度でうつ病かそうでないかを判別することができたという。

次のページ