山下:皇太子時代から持っておられたお気持ちですよね。

──7月13日にNHKの第一報があったにせよ、5年以上前から体調を気にされていた陛下が、なぜ今年8月に「お言葉」を発表されたのか。「今年」に意味はあるのでしょうか。

久能:昨年8月15日の戦没者追悼式で、黙祷の前にお言葉を読み始められた「順番違い」が決定的だったのでは。当初は、今年のお誕生日の12月23日を前にした会見でおっしゃるつもりだったように思いますが、7月の報道があって、12月まで待っていると無用な臆測を招きかねない。それなら早くという思いがあったのではないでしょうか。

近重:7月の第一報後に巡ってきた情報では、NHKの記者は参院選の前から情報をつかんでいたらしい。局内事情や官邸との絡みで、7月の参院選後になったようだと聞きました。本来、8月上旬から中旬は、広島、長崎の原爆の日や終戦記念日など、戦争に心を寄せてお慎みになる時期です。そして日航機墜落事故の追悼もあります。表明は8日しかなかった。7月13日から1カ月おかずに発表なさりたいという強い思いも感じました。

山下:節目を意識されたのかもしれません。2020年1月1日に譲位が実現すれば、2月がお誕生日の皇太子殿下は59歳。60歳になる前に即位できます。

 皇室典範改正を前提にした場合、有識者会議なりの議論に1年はかかる。今年秋から始めて17年秋まで。翌18年1月からの通常国会に提出し、6月までに可決。その後、典範に規定された手続きを進める。結果、18年中に退位が決定しても、国民生活の混乱を避けるために実際の退位は数カ月から1年先になる。

 つまり、皇太子殿下が60歳までに即位するには今年秋から議論を始める必要があります。それと陛下は8月14日までにお気持ちを表明したかったのではないかと思っています。8月14日までは戦後70年だからです。この節目を大事にされていたのではないかと。

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