全米で約3億丁もあるとされる銃を保有しているのは、ここの会員のような人がほとんどだ。会長のカート・ショーバール氏(78)は父親に銃の撃ち方を教わり、5歳の時から愛犬を連れて、トウモロコシ畑を荒らすキジやモグラを撃った。彼の娘にも10歳になる前に銃の扱い方を教え、今では、遊びに来た娘夫婦と一日中、射撃を楽しむなど、純粋なスポーツなのだ。

 ニューヨーク州の中部から北部は、どの家庭も銃を保有する。理由の一つが「自己防衛」だ。同氏は、ベッドから2メートルほどの場所にライフルを置いている。

「万が一、強盗が来た場合の自己防衛のためだ。でも、どの家庭にも銃があるからといって、事件は起きていない。銃が人を殺すのではない。悪い人間が、人を殺すのだ。私たちは、修正第2条を誇りに思っている。他のどこの国にもないものだ」

●自動小銃見せ権利主張

 ただ、大統領選を取材していて、気になる光景も見かけた。

 7月18日から中西部オハイオ州クリーブランドで開かれた共和党大会会場周辺。警察官でもないのにピストルや自動小銃を身につけた一般の男女を見た。同州は、銃器を公共の場で持ち歩いていいため、禁止されているほかの州の若者が勇んで銃器を見せびらかしていたのだ。聞くと、「(憲法修正第2条の)権利を行使して、人々に訴えているんだ」と答えた。

 前出のショーバール氏にその話をすると、顔を曇らせた。

「多くの人が集まるような場所で、銃を所持するのは賛成できない。銃を奪って、悪用する人間もいるかもしれないからだ」

 銃を持つ保守派の多くは、フツーの市民だ。しかし、自殺や殺人など銃によって命を落とす人は全米で毎年約3万人にのぼる。銃の入手や保有があまりにも簡単なことと、関連がないとは言い切れないだろう。(ジャーナリスト・津山恵子)

AERA 2016年8月29日号