長谷川:僕が演じた矢口は、38、39歳という年齢ながら、内閣官房副長官という政府の高官。日本に今までほとんどいなかったと思います。だからこそ、そのポジションにある人間がどうしてそこに立てたのか、その人物像を組み立てるのがなかなか難しかったです。

石原:私は、最初どういう役かまったくわからなかったんです。それが、台本を読むと米国大統領特使。これは他にもっと適した方がいるだろう、なんで私にこの役が来たんだろうって(笑)。とにかく役柄的にわからないことが多すぎて。海外にいる友人や知り合いに、服装や考え方、口調まで教えてもらったりしながら役作りをしました。

●「シン」に様々な解釈

長谷川:とにかくセリフは早口でしゃべってくれと言われたので大変でした。早くなかったらカットされる、という噂まであって(笑)。

石原:そう。とにかく滑舌は必死でした。

──シン・ゴジラの「シン」は様々な解釈がされています。何を意味していると思いますか。

長谷川:神様の「神」であったり、真実の「真」であったり、新しさの「新」であったりと色々と言われています。それらが複合した意味での「シン」なんですよね。

──どのような映画に仕上がったのでしょうか。

石原:この映画は、日本人がいま作るべき作品だと思いました。2011年に起きたあの「3.11」の地震と津波を経験した日本人が作るべき作品だと。ゴジラって、怪獣だけど怪獣じゃなく、何かに例えられています。それは災害であったり、私たち人間が抗うことができないものであったりします。その恐怖は「3.11」で味わっているので、その感覚は撮影しながら感じていました。

長谷川:初代ゴジラに近く、その上で新しいゴジラを作ったという気がします。初代ゴジラはチャーミングなところもあったのですが、シン・ゴジラは恐怖しかない感が強いな、と。

石原:映画はすごい情報量で展開のスピードも速く、自分の中にのみ込むまで時間がかかると思います。その中で、自分はどこにワクワクしたのか、どの人に疑問を感じ、どの人の言葉で救われたのかを考えてほしい。そして、想定外のことが起きた時にあなたならどうしますかということを、議論してもらえたら嬉しいです。

AERA 2016年8月1日号