こうした空気を生みだす原因の一つは、安倍政権のもとで繰り返される番組制作現場への口出しだ。

 14年11月26日の夕方、テレビ朝日に、1枚のファクスが送られてきた。宛名は〈「報道ステーション」担当プロデューサー殿〉。差出人には、自民党の当時の報道局長名が記されていた。

〈11月24日付「報道ステーション」放送に次のとおり要請いたします〉という表題に続き、番組内容について〈アベノミクスの効果が、大企業や富裕層のみに及び、それ以外の国民には及んでいないかのごとく(中略)報道がなされました〉と批判。さらに、意見が対立している問題は多角的に報じるべきとした放送法第4条4項を挙げ、〈同番組の編集及びスタジオの解説は十分な意を尽くしているとは言えません〉としている。

「放送法を持ち出してきていて、明らかな脅しと感じた。これまで電話で放送内容にクレームを言われることはあったが、文書による圧力はなかった。それまでの政権になかったことをやってきていた」(番組関係者)

●画面から消えた街頭インタビュー

 自民党が報道機関に圧力をかけた明白な証拠ではないのか。この文書の存在を報じた15年4月10日付の朝日新聞によると、自民党は「圧力ではない」と説明している。アエラがあらためて自民党に問い合わせると、「報道局長や職員が代わり、当時のことはわからない」(広報担当)という回答だった。

 一方のテレビ朝日は、「(文書を)受領したことは事実です」(広報部)と認めたうえで、番組制作への影響については「特定の個人・団体からの意見に左右されることはありません」(同)とアエラに回答した。

 自民党は問題のファクスを送る6日前、在京の各テレビキー局にも、総選挙報道を「公平中立」に行うよう求める別の文書を送っている。そのなかで、街頭インタビュー、資料映像などで一方的な意見に偏らない▽番組出演者の発言回数や時間、ゲスト出演者選びなどで公正を期す──などと求めていた。安倍首相がTBSの「NEWS23」に出演し、街頭インタビューの内容を取り上げ、

「全然、声反映されていません。おかしいじゃないですか」

 と声を荒らげた2日後の要請だった。

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