「最後に希望を感じられる作品にしたいなと考えていました」と新作の狙いを話す仲村颯悟監督/1月25日、東京都渋谷区(撮影/編集部・渡辺豪)
「最後に希望を感じられる作品にしたいなと考えていました」と新作の狙いを話す仲村颯悟監督/1月25日、東京都渋谷区(撮影/編集部・渡辺豪)

 普天間返還が合意された年に生まれた沖縄出身の大学生映画監督・仲村颯悟。自らの人生を踏まえて制作した自主映画に、どんなメッセージを込めたのか。

「人魚に会える日。」を鑑賞した後、しばらく頭の中が混乱していた。どう解釈すればよいのか、分からなかったのだ。沖縄をテーマにした映画の「定型」からは明らかに外れている。それが仲村颯悟(りゅうご)監督の狙いだと知って、「やられた」と思った。

 沖縄の架空の集落「辺野座」を舞台に繰り広げられる「ホラーテイストのファンタジー」。現在最もホットな沖縄の政治課題である辺野古新基地問題をど真ん中に据えながら、容認派か反対派かという二元論に回収されることを避けている。というより、拒んでいる。これは仲村の意思であり、たくらみである。

 それを物足りないという人、あるいは不謹慎だととらえる人もいるかもしれない。だが、基地への賛否の論議に回収された瞬間、作品には政治的な着色が施され、観客を選ぶ。そうした「すみ分け」を超える作品を仲村は志向したのだ。

 仲村は昨年4~6月に寄稿した「沖縄タイムス」の連載でこうつづっている。

次のページ