精神科医名越康文さん(55)「エピソード1~3では、ヨーダの苦悩を感じる」と名越さん。ジェダイ教育の構造的問題に悩んでいたのではないか(撮影/高井正彦)
精神科医
名越康文さん(55)
「エピソード1~3では、ヨーダの苦悩を感じる」と名越さん。ジェダイ教育の構造的問題に悩んでいたのではないか(撮影/高井正彦)

 1977年に初公開されてから、多くのファンを魅了してきた「スター・ウォーズ」(SW)。そこで描かれているのは、単なる善と悪との闘いにとどまらない。ファンでもある専門家らは、より深いものを読み取っているようだ。

 SWでは、フォース(=力)を操り、銀河系の平和を守るジェダイと、フォースを持ちながらダークサイド(暗黒面)へ堕ちてしまった人々の姿が描かれている。しかし、フォースにおける善の側面(ライトサイド)は、案外頼りない。

「エピソード3/シスの復讐」では、数えきれないほどいたジェダイが罠にかかって大粛清される。察知できなかったのかと、首を傾げた人も多いだろう。

「SWを愛すればこそ、の苦言であることをご理解ください」と前置きしたうえで、精神科医の名越康文さん(55)は言った。

「ジェダイ式教育にも、問題があったのでは」

 ジェダイの卵は「ジェダイ・アカデミー」で、教育も訓練も集団で一律に受ける。

「少なくともフォースという内在的な力を引き出すのには、不向きだと思います。なぜなら、生徒一人一人で、学ぶスピードや気づきのタイミングにかなり差があるはずですから」とし、こうも続ける。

「心の力を引き出すのは、とても難しいこと。そのためには、個人に向き合わなきゃいけません。本質的には、跳ね返りが出てきても、じっくりつきあうのが師匠の役目ではあるでしょうね」(名越さん)

 跳ね返りの代表といえばアナキン(ダース・ベイダーがダークサイドに堕ちる前の姿)だが、師匠のオビ=ワン・ケノービや他のジェダイマスターは、彼を真正面から受けとめただろうか。

 弟子が未熟さを露呈したときに、師がしばしば持ち出すのは「掟の順守」である。

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