「早急に保護した上で成年後見人を選定し、正当な形で施設や医療機関に入れるよう道筋をつくるべきだと話をしました」(船崎さん)

 この親族はこれまでも、地域包括支援センターなどの介入があると抗議の電話をしつこくかけてきていた。このため、老人福祉法に基づく措置決定という手続きを踏み、医療機関に即座に入院させて安全を確保。成年後見人も、虐待のケースに対応した経験のある弁護士の推薦を弁護士会に依頼して、家庭裁判所に申し立てた。さらに「親族なのに、なぜ入院先を知ることができないのか」など、親族からの問い合わせに的確に回答できるように対応を指示した。

 すべての措置を終えた約5カ月後。表情に乏しく、コミュニケーションも十分に図れなかったこの高齢者は、担当職員と笑顔であいさつを交わすことができるようになった。

「これで救われた」

 職員がもらしたこの一言が、船崎さんは忘れられない。

「基礎自治体で仕事ができるよさは、公益的な幅広い分野に関われること。私の弁護士としての経験を生かしてもらえるように実績を積みたい」

AERA 2015年11月16日号より抜粋