「キリン 午後の紅茶 あたたかいミルクティー」(345ミリリットル)を少し温めて飲む。ホット用のペットボトルは、酸素を通しにくい構造で、飲用後に胃の中で泡ができにくい。スチール缶の「伊藤園 お~いお茶 緑茶」(340グラム)も、飲用後に泡ができにくく、代用することがある(写真:キリン、伊藤園提供)
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「キリン 午後の紅茶 あたたかいミルクティー」(345ミリリットル)を少し温めて飲む。ホット用のペットボトルは、酸素を通しにくい構造で、飲用後に胃の中で泡ができにくい。スチール缶の「伊藤園 お~いお茶 緑茶」(340グラム)も、飲用後に泡ができにくく、代用することがある(写真:キリン、伊藤園提供)

 難治がんの典型といわれる膵臓(すいぞう)がん。年間の死亡者数は罹患者数にほぼ匹敵し、患者の生存率は極めて低い。早期発見が重要になるが、そのためにある飲み物が有効であることがわかってきた。

 大阪府立成人病センター副院長の片山和宏医師はこう話す。

「実は膵臓がんの5年生存率は1センチで見つかれば約80%、2センチでも50%くらいあり、早期に手術で切除できれば治療成績は悪くありません。問題は早期発見が難しく、ほとんど見つからないことにあります」

 膵臓がんは、1センチくらいまでは膵臓の中にとどまり、痛みを感じない。大きくなり、膵臓の外に顔を出して周囲の神経に浸潤すると、不快感や鈍痛が出てくる。痛みが強くなるのは、もっと大きく広がってからだ。なぜ早期に検診で見つけられないのか。片山医師は言う。

「おなかの中の小さいがんは、CT(コンピューター断層撮影)やMRI(磁気共鳴断層撮影)よりも超音波検査のほうが見つけやすいんです。ところが、空気は超音波を通しにくい性質があるので、空気をたくさん含む胃の後ろ側にある膵臓は半分程度しか見えません。そこにがんがあれば見逃してしまうんですね。膵臓に対応した特殊な内視鏡を使えば発見できますが、何の症状もない人に検診で実施するにはハードルが高すぎます」

 放射線被曝も苦痛もない超音波で、なんとか膵臓全体を見られないものか――。

 同センター検診部のスタッフがたどり着いた答えが、「超音波検査の時にミルクティーを350ミリリットル飲む」という方法だった。ミルクティーで胃を満たすことで、胃の中の空気が移動して超音波が通りやすくなり、膵臓の90%前後まで見えるようになったのだ。

「いろいろな飲料を試しました。炭酸飲料や窒素を充填しているアルミ缶の飲料は、胃の中に入ると細かな泡が邪魔になる。柑橘系のレモンティーは、胃液と反応してかえって見えなくなる。ミルクティーの適度な濁り具合が、ちょうどいい程度に超音波を通し、くっきり見やすくなるとわかりました」(片山医師)

 通常の超音波検査は10分程度で終わるが、「膵精密エコー」と名付けたこの検査では、40分程度かけて丁寧に見ていく。患者の姿勢を変えながら十分観察した後にミルクティーを飲用してもらい、さらにくまなく膵臓を見る。

AERA 2015年9月7日号より抜粋