「70年前、日本は二度と戦争の惨禍を繰り返してはならないと不戦の誓いをした。この先もずっと変わることはない」


「痛切な反省の中から日本は世界の平和と発展、特にアジアの国々の発展のために力を尽くさなければならない」

 李さんによると、中国で対中強硬派のレッテルを貼られている安倍首相の意外な「親中ぶり」は、中国内で大きな話題になったという。

「まるで2人の安倍晋三がいるようだ。一人は安保法案を推し進める安倍、もう一人はフェニックスの取材を受ける安倍、どっちが本物なのか。こんな意見も出るほど、中国内では驚きをもって安倍首相の変貌が受け止められました」(李さん)

 習近平と安倍晋三。天敵のように思えた2人が、間接的にではあるが、なにやらキャッチボールを始めたようにも見える。

 日中関係に詳しい東洋学園大学の朱建栄教授は、中国の変化には対米関係の変化が影響していると見る。

「南シナ海、AIIBなどの問題で、中国が当面戦うべき相手が米国であることがはっきりしてきたので、日本を抱き込む必要が生じたということでしょう。中国にとって、日本の戦略的な位置づけが変わったのです」

 朱さんは「爆買い」の勢いが広がっているところにも注目する。中国政府は、あたかも水道の蛇口を開け閉めするように、海外旅行者の総量を政治的に管理できるので、爆買いの背後に中国の対日政策の変更が浮かび上がるというのだ。

「止めようと思えば止められるのに、あえて止めない。日本の進んだ生活文化を見せることは、中国社会が日本の戦後を肯定することにつながる。それは、人件費が年間10%も上昇するなかで経済の構造転換が必要になったから、日本モデルに学びたいということでしょう」

※「ミャオ」は水が3つ
AERA 2015年7月27日号より抜粋