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 子育てに仕事に……ワーキングマザー、それもシングルマザーとなれば、大変なのは当然。そんな時、フランス人のワーママはこんな風に乗り切っているのだとか。

 大学で哲学を専攻し、並行してコンセルヴァトアール(音楽院)でオペラを学んだアニエス・コンブ(43)は若くして結婚、娘を出産した。現在15歳の娘が2歳の時、離婚し、シングルマザーになった。

「それまでフリーランスのオペラ歌手として働いていたのですが、収入が足りず、経済的に苦しい立場に陥りました。私は安定した給料がもらえる会社員になる必要に迫られました」

 そんな時に化粧品会社ランコムに勤める友人から声がかかった。それまで外注していた「化粧品宣伝コピー」に満足できず、美意識の高いアニエスに原稿の依頼がきたのだ。それがすばらしい内容だと評価され、ロレアル入社を勧められた。

 アニエスは2001 年から、ロレアルグループのヘレナ ルビンスタインの化粧品トレーニング部に勤めた。高級化粧品の販売員向けに、ブランドや商品のアピール方法など販売戦略を練り、社員を教育する仕事だ。人材トレーニングという自分の専門分野を得た。

「高級化粧品業界とは縁のなかった私はラッキーでした。ロレアルはHEC経営大学院のようなエリートビジネススクール卒の堅いタイプの人と、まったく美容ビジネスとは縁のない人材を上手にミックスしています。同僚には元指揮者や元プロアイススケーターもいましたよ」

 その後、ロレアルの香水部門のトレーニング担当、化粧品ブーニング・ディレクター、LVMHグループのゲランの国際トレーニング・ディレクターと、専門分野でポストを極めた。

 その間、シングルマザーとしてキャリアと育児を両立させた。ロレアルで働き始めた頃は外国出張が多く、娘が7歳になるまで外国に連れていき、昼間は現地のベビーシッターに預けた。

「問題が発生した時は常にユーモラスに解決していました」

 たとえば、家に帰ると洗濯物はたまっている、冷蔵庫は空っぽ。じゃあ、お寿司でも頼んでリビングルームの床でピクニックしましょう、と娘と一緒に笑えば、問題は解決。哺乳瓶を温めようとして電子レンジが壊れているのを発見した時は、「近所のカフェでお湯をもらえば、赤ちゃんはハッピー!」と、笑顔で過ごした。

 そんなふうに、なんとか仕事と育児を両立してきたアニエスは、少し前、英国のキャサリン妃が、お産から10時間も経っていないのに、完璧な姿で人前に現れたことに愕然とした。

「誰でも出産直後、モデル並みに綺麗でいるのが当たり前だと思わせるシステムは危険です」

AERA  2015年6月15日号より抜粋