「国会議員さえ交渉の中身を知ることができない、というのではTPP全体への反発が強まる。米国では連邦議員は閲覧できる。いつまでも秘密のまま、というわけにはいかない。見せても分からない難解な文書だから、開示する姿勢を見せるのが得策と考えたのでしょう」

 TPPは農産物や自動車などの貿易交渉のように伝えられているが、交渉対象の21分野は、暮らしに直結する制度やルールに関わることばかり。なのに、国会議員さえ何が話し合われ、どう決まったか分からないのは、異様なことだ。その秘密ぶりは、米国でも問題になっている。交渉を大統領に一任する貿易促進権限(TPA)法案の審議が始まり、不満をなだめるため、連邦議員に条文案が開示されるようになった。

 西村氏が前言撤回の理由に挙げたのは、「制度の違い」だ。米国では秘密をもらした議員に罰則を適用できるが、日本ではそれが難しいから、という。ただ、関係者は「本音は国会対策」と明かす。条文案を開示すれば、国会でいろいろ突っ込まれ、安保法制や農協改革、労働法制改革の審議に影響する。だから、副大臣ごときが勝手に決めるな、と官房長官が怒ったというのだ。

AERA 2015年5月25日号より抜粋