※イメージ写真
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 10歳を記念する「2分の1成人式」が、全国の小学校で盛んに行われている。だが、旧来の家族観の押し付けと受け取る親子も少なくない。

 今、全国的な広がりをみせている、「親子の絆」を確かめ合う「2分の1成人式」。体育館に集まり、親子が向かい合った形で、子どもが親への感謝の手紙を読み上げると、親から子どもに名前の由来をはじめとしたエピソードが発表される。感謝を伝える合唱を披露、子どもが親にキャンドルサービス、相次ぐサプライズに涙する親…。

 式に先立って、生まれた時の様子や小さい頃の思い出を親にアンケートで問う学校も多い。離婚や再婚を経験した家庭には書きようのない問いかけも含まれるため、困惑する親子も少なくない。

 2012年にベネッセが行ったアンケートでは、9割近くの保護者がこの式について「満足」と答えている(「とても満足」24.8%、「まあ満足」63.3%)。この行事は学習指導要領に規定されているわけではないが、例えば東京都教育委員会は小学3、4年版の道徳教材「心しなやかに」を活用する一例として「2分の1成人式」を挙げ、生徒の自信につながる行事であると位置づけている。

 内田良・名古屋大学准教授(教育社会学)は、この行事の存在自体に異を唱える。

「この行事は、父親と母親がそろっている家庭、親に愛されてきた子ども、そういった旧来の家族神話に基づいた行事のように思えてなりません。10歳までの年表を作成する学校もあるそうですが、多様化する家族形態にまったく配慮が行き届いていません」

 父母に過不足なく育てられた子どもならばまだしも、たとえばもし児童虐待に遭った経験を持つ子どもがいれば、親子の絆を求める学校の姿勢がプレッシャーになる、と内田さんは見る。彼らは先生の前では親の存在を悪く言わない。12年、虐待死した子どもが「2分の1成人式」で親に対して「…お母さんありがとう…お母さん大好(原文ママ)です」と手紙を書いていたという報道もあった。

 まもなく、娘が「2分の1成人式」に出席するという会社員の男性(40)は、こう話す。

「娘が『◯◯ちゃんのいいところをお父さん、お母さんに書いてもらってきてね』というプリントを持って帰ってきた。そんなものはひとつに決めなくていいんだよ、と書き込んだら、先生から書き直しを命じられて…。親子の間柄について、学校が正しい・正しくないと決めつけるべきだとは思いません」

AERA 2015年2月23日号より抜粋