準優勝したマドリード・オープンの表彰式。スペインのソフィア王妃や観客からねぎらいの拍手を受け、手を上げて応える錦織圭(写真:gettyimages)
準優勝したマドリード・オープンの表彰式。スペインのソフィア王妃や観客からねぎらいの拍手を受け、手を上げて応える錦織圭(写真:gettyimages)

 日本男子テニスで前人未到のトップ10入りは、錦織圭には通過点にすぎない。頑強な肉体を手に入れれば、4大大会優勝は、もう手の届くところにある。

 5月11日、マドリード・オープン決勝。錦織圭は第1セットを6-2で奪い、第2セットも途中までは4-2でリードした。クレーは「自分の庭」と言っていいほど、無類の強さを誇るナダルを圧倒的に攻め立てた。

 結末はつらすぎた。疲労がたまると発症するでん部の痛みが急に走る。足が止まった。第3セット、0-3となったところで無念の棄権を強いられた。それでも4大大会に次ぐ格であるマスターズ大会での準優勝は称賛に値する。

 錦織は2009年夏の右ひじ手術という試練を乗り越え、階段を上がっていく。昨季は世界11位まで到達。しかし、「トップ10」の重圧に屈して足踏みした。

 今季、重圧は解けた。3月の米マイアミの大会で世界のトップ5を連日撃破してベスト4に入る。4月のバルセロナ・オープンで優勝し、マドリードも準優勝。12日発表の世界ランキングで日本男子初のトップ10となる9位に浮上した。

 今季からコーチ陣に加わった元全仏王者、マイケル・チャン氏(米)の存在が大きい。

 昨年暮れ、米フロリダ州ブラデントンで、チャン氏が錦織を指導するのを見る機会があった。錦織は言っていた。

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