健康のために始めたマラソンなのに、無理するとケガや病気の原因になることも。ランニングを心から楽しむためには、正しい知識と事前の準備が欠かせない。

 マラソンで25キロ以上走ったときに発症する可能性の高い疾患や異常を調べてみた。脱水症状や振動性胃腸障害、腱や関節などの損傷、皮膚や爪の擦過傷など、筋肉の外傷から内科系疾患までさまざまだ。原因は、長時間の運動による体力の消耗や疲労のほか、4万~5万歩、ジャンプ運動する衝撃だ。背骨が圧迫され、走る前より身長が1~2センチ縮み、首の痛みや腰痛が起きることも。胃腸が揺らされ、傷ついて出血したり、振動で腸内にガスが溜まって左脇腹が痛くなったりもする。運動中は筋肉に血流がいくため、腎臓や膵臓などが機能障害を起こすことも。足裏の毛細血管内の赤血球が壊れ、スポーツ貧血を起こす場合もある。

 レース後も危ない。賀来医師は、完走後の入浴に注意が必要と指摘する。フルマラソン後、多くの人は脱水症状にあり、そのまま入浴すると血管が拡張して脳や心臓への血流が減る。意識を失って溺死したり、水圧も加わって心臓への負担が増し、心筋梗塞を起こしたりするのだ。

 ここまでフルマラソンの過酷さや恐ろしさを書いてきたが、適切なトレーニングやメディカルチェックを受けて万全の状態で臨めば、健康効果を期待できる。

 体力アップやダイエットだけでなく、心肺機能や臓器が強化されるのだ。では、適切なトレーニングとはどの程度なのか。

「人にもよりますが、ぐったりして次の日に疲労が残るほどの運動は体への負担が大きい。健康効果が期待できるのは、心拍数は安静時の2~2.5倍程度、120~180程度が目安です」(賀来医師)

AERA  2014年2月24日号より抜粋