しかし、昨年9月、猪瀬知事のもと、計画が見直された。新設ではなく、運転期間が35年超の老朽化した火力発電所のリプレース(建て替え)推進に後退してしまった。若林和彦・都環境局電力改革推進課長は、説明する。

「震災後、都内でも計画停電が実施され、電力供給は危機的状況に陥りました。そうした状況でこのプロジェクトが立ち上がった側面がありますが、13年度は懸念された電力不足に陥らず、電力事情が震災前とは大きく異なっています。老朽化した火力発電所は故障のリスクがあり、電気の安定供給の面からリプレースにシフトしました」

 さらに、都の脱東電路線を後退させかねない事態が昨年末、突然起きた。猪瀬氏は知事就任1年の節目に、新たな長期ビジョンを打ち出す予定だった。ところが、徳洲会からの5千万円借り入れ問題を受け、長期ビジョンの公表直前に猪瀬氏が知事を辞職。長期ビジョンは白紙になり、新知事のもとで練り直しを迫られている。

 舛添要一都知事は、東電の柏崎刈羽原発を含め、原発再稼働に動く政府に異議を唱えられるのか。都のエネルギー政策は岐路にある。

AERA  2014年2月17日号より抜粋