東日本大震災の直後、東京都が「脱東京電力」の姿勢を鮮明にしていたことを覚えているだろうか。当時は石原慎太郎知事で、副知事だった猪瀬直樹氏が、その先頭に立っていた。

 都の約1200施設の電気の購入先を、東電から特定規模電気事業者(いわゆる「新電力」)に切り替えていった。2013年度中に350施設が新電力の電気に変わる見込みなのだが、その脱東電路線がずるずると後退しているようなのだ。

 都には「2020年の東京」という長期ビジョンがある。震災の記憶が新しい11年末、石原知事のもとで策定されたものだ。そこには「東京産電力300万kW創出プロジェクト」という事業が掲げられた。目玉は「100万kW級の天然ガス発電所新設」。原発1基分の発電能力に相当する火力発電所を、都が自前で持とうというのだ。公募で発電事業者を選定し、1千数百億円をかけて建設する計画だった。

次のページ