企業向けアカウントの廉価版「LINE@」の登録を呼びかける「渋谷109」の店頭など。109ではテナントにLINE@のアカウント取得を推奨し、バーゲン期に全館を挙げてフル活用した(撮影/今村拓馬)
企業向けアカウントの廉価版「LINE@」の登録を呼びかける「渋谷109」の店頭など。109ではテナントにLINE@のアカウント取得を推奨し、バーゲン期に全館を挙げてフル活用した(撮影/今村拓馬)

 国内外を問わず多くの人が利用し、今や欠かせないツールのひとつとなった、無料通話アプリ「LINE」。ユーザーにとってコミュニケーションツールであるとともに、企業にとっては効果の高い広告としての側面をもつ。それが、企業の「公式アカウント」だ。企業はアカウントを取得すると、登録してくれたユーザーにメッセージで直接、セールや新商品情報を発信できる。

 この効果を加速させませんか、とLINEが次に勧めるのが、企業の自社キャラクターの「スタンプ」化だ。

 ロッテが「コアラのマーチ」の、あのコアラのキャラクターのスタンプを配信したところ、ダウンロードは590万件を突破。その後に通常のメッセージのやり取りで使用された回数は4千万回を超えた。すると、コンビニでは1割以上、スーパーでは4割以上も売り上げが伸びたという。

「スタンプはいわば『使ってもらえる広告』。ユーザーに宣伝している意識はないが、送受信する中でキャラクターへの愛着や親近感が自然と高まり、定番商品でも購買を押し上げている。LINEさんがそこまで狙ってスタンプを考案したのだとしたら、お見事」

 そう話すのは電通デジタル・ビジネス局の担当者。

 企業にとってネックは価格だ。公式アカウントは4週間800万円から、スタンプも2500万円からと値が張る。サービス当初はアカウントが350万円、スタンプが1千万円だったというから、LINE側も追い風に乗って強気の価格設定をしているようだ。ただ、これでは宣伝費に余裕のある大企業しか使えない。ビジネスのすそ野を広げようと、LINEが12年末に提供を始めたのが廉価版のアカウント「LINE@」だ。

 費用は月額5250円とはるかに安い。友だち登録の上限が原則1万人と威力は劣るが、商圏の小さい小売店や飲食店などからの申し込みが殺到。契約はすでに約1万5千社に達している。ドラッグストアを全国で1千店超展開するツルハホールディングスは全店舗でLINE@を取得。デジタルチラシを配信し、1日あたり千人以上の友だち獲得につなげている。本市では商店街の店舗が集まってLINE@を取得するなど、地域活性化にも一役買う。

AERA 2013年12月9日号より抜粋