「カラコンなしだと恥ずかしい」と言うほど、おしゃれ感覚で広がっているが、使い方には十分な注意が必要だ(撮影/写真部・関口達朗)
「カラコンなしだと恥ずかしい」と言うほど、おしゃれ感覚で広がっているが、使い方には十分な注意が必要だ(撮影/写真部・関口達朗)

 カラーコンタクトレンズの中でも、特におしゃれを目的とした「おしゃれカラコン」が近年、爆発的に増えているのをご存じだろうか。

 2009年、厚生労働省の承認を受けたカラーコンタクトレンズは10品目以下だった。だが今年1月には、少なくとも19社38製品、258品目にまで増えた。またインターネットでは、海外直輸入の未承認商品も売られている。それに比例して、おしゃれカラコンに関する全国の消費生活センターへの相談や、眼科での症例が目立っている。ウエダ眼科(山口県下関市)の植田喜一院長によると、こんな症例がよくある。

 ある20歳の女性は、朝起きようとしたら目に痛みが走り、まぶたを開けられなかった。しばらくして鏡を見たところ、両目が真っ赤に充血していたので、急ぎ眼科にやってきた。両目の角膜(黒目)にいくつも傷ができ、炎症を起こしていた。

 植田院長は「角膜浸潤」と診断した。角膜浸潤は、ソフトコンタクトレンズによって起こることが多い。レンズのカーブが目に合っていないためで、物理的な刺激による傷が原因だ。

 この女性は普段から、度なしで黒色や茶色で縁取られた、おしゃれカラコンを愛用していた。ワンデー(1回分の使い捨て)タイプだったのに、「もったいないから、3週間使っていた」と言う。ケアの方法を教えてもらったことはなく、保存液につけておくだけで、こすり洗いをしたことはなかった。

 植田院長がレンズケースを調べたところ、使っていた保存液中の微生物のセラチア菌量が「III+」だった(I+、II+、III+の順に判定され、III+は「非常に多い状態」。I+は菌が1千から1万個、III+は100万個以上)。

 セラチア菌は、常在菌の一種で弱毒性。ただし、目の傷から感染すると、菌が増殖して炎症を起こす。女性のように、早めに診てもらえば大事に至らないが、炎症が進み「角膜潰瘍(かいよう)」になると、視力低下を起こす。緑膿菌やアカントアメーバなどに感染した場合は失明する可能性もある。女性は抗菌剤とステロイド剤の目薬を3週間余り投与し、ようやく治ったという。

AERA 2013年6月24日号