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仮設住宅癒す「坊主カフェ」で命のリレー

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 東日本大震災で4千人近い犠牲者を出した宮城県石巻市。その中心部から5キロほど離れた工業団地の建設予定地に、総計1千戸を超す被災地最大級の仮設住宅群がある。「開成仮設住宅」だ。約4千人が暮らしている。

 汗ばむほどの晴天となった10月10日。作務衣姿の僧侶たち8人が、軽トラックを運転してやってきた。手際よく集会所の前にテントを建て、看板を立てかける。

「Café de Monk お坊さんの喫茶店」

 仮設のあちこちから、おばあさんがやってくる。小さな子どもを抱いたお母さんの姿もある。僧侶たちは持参したケーキとお茶を無料で振る舞い、テーブルを回って声をかける。月に2回ほど被災各地を巡回しているが、開成仮設住宅は最多の23回目。顔なじみの人も多い。4時間の営業時間に利用したのはのべ100人。

 呼びかけ人は50キロ内陸の栗原市に500年続く曹洞宗通大寺の住職金田諦應さん(56)だ。モンクは英語でお坊さんのこと。「お坊さんのカフェ」と「カフェで文句」をかけて命名した。

 片隅のテーブルには布製の愛らしいお地蔵さんが置かれていた。

「手のひら地蔵 津波で大切な方を亡くし寂しい思いをしておられる方へ差し上げます」

 と横に札が立っている。

「わあ、これ、もらえるの?」

 おばあさんたちが集まってきた。

「重いがんのおばあさんたちが皆さんのことを思ってつくってくれたんですよ。命のリレーだね」と金田さん。

 一人ずつ、おばあさんの手を握り、それぞれの願いごとを唱えながら渡していく。

「体調が悪い」と話していたおばあさんには「体が良くなりますように」。「『いい人が見つかりますように』でお願いします」と、笑いを誘ったおばあさんもいた。

 カフェの終了間際、初めて来たというおばあさんが「最近、事故で息子を失った」と話し始めた。金田さんはお地蔵さんを手渡し、そっと手を握る。涙ぐんでいた周囲のおばあさんたちも手を重ねた。

「また来ます」

 息子を亡くしたおばあさんはお地蔵さんをにぎりしめ、帰っていった。

AERA 2012年11月5日号


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