仕事中、チョコレートや饅頭を食べていないとイライラする。食べ始めると気持ち悪くなるまで食べ続けてしまう……。

 こんな経験を持つ読者も少なくないだろう。この異常な欲求について、順天堂大学大学院医学研究科の白澤卓二教授はこう指摘する。

「麻薬中毒患者がドラッグを求めている行動と同じ。まさに『マイルドドラッグ中毒』の症状です。普段、口にする常習性がある食べ物が原因で、それが途切れると禁断症状が現れる。代表例が砂糖。日本人の5割が砂糖中毒と考えられる」

 マイルドドラッグとは聞き慣れない言葉だが、砂糖のほか、油、塩、化学調味料、炭酸飲料などがこれにあたるという。牛丼やハンバーガーといったファストフードに多く含まれている。

「例えば、子どもが大好きなハンバーガーやドーナツは立派なマイルドドラッグ。食べ続ければ成人までに立派な中毒患者になっている」

 諸外国ではマイルドドラッグが社会問題化している。米国では炭酸飲料をよく飲む高校生の銃器所持率が高く、暴力行為も多いとする調査結果が出て、禁断症状の一種だと指摘されている。

 砂糖をすべて控えるというのは、現代の食生活ではほぼ不可能だろう。そこで白澤さんはこう指摘する。

「精製度が高いほど中毒性が高くなる。だから甘味料も、精製度の低いものや麹に変えるとよい。長年かけて習慣化したものをやめるのは難しい。がまんをして摂取を断ち、時間をかけて治すしかない」

 実は記者本人が「マイルドドラッグ中毒」。そこで実際に甘菓子を断ってみた。しかし、最初の1週間がもっともつらく、2週間で挫折。自暴自棄になり、かえって食生活が乱れた。

「いわゆるリバウンドみたいなもの。イライラがあまりひどいのなら、たしなむ程度なら食べてもいい。そんなにあせる必要はない」

 と、かかりつけの医師から励ましの言葉をもらった。そこで(1)つらいときにはがまんしない(2)ゆっくりと食べる(3)結果をあまり意識しない、の3点を心がけた。これらを守ることで、状況はかなり改善した。

AERA 2012年11月5日号