あなたにはお気に入りの本屋がありますか? 本屋にふらっと立ち寄り、気付けば何時間も経っていたという経験は誰しもあるのではないでしょうか。



 雑誌『ケトル』4月号は「本屋」特集。日本全国の旅先で必ず寄るべき本屋さんを紹介しています。さらに本を片手に立ち寄りたい周辺の喫茶店やおすすめの食事処も紹介。本を中心に巡る旅を提案しています。



 ここで紹介される小さな町の本屋は大型書店に負けまいと独特の世界観で私たちを魅了させてくれます。キーワードは「楽しい落とし穴」。絵本や写真集料理本などある分野に特化した本屋や、迷路のような構造の本屋、店主がおすすめの一冊を選んでくれる本屋など、思わず引き込まれてしまう仕掛けがたくさん詰まっています。



 なかでも驚きなのが、売れない文庫ばかりを集めた「なぜだ!?売れない文庫フェア」を開催する札幌の「くすみ書房」。読んでみるといい本はたくさんあるのに、売れていないからといって本屋に並ばず、人の目に触れないまま絶版になっていく。ならば本当に売れないのか試してみよう......という逆転の発想で同フェアを開催、多くのお客さんの心を掴んだ本屋です。



 同店では、ほかにも「うちでは人気のちくま文庫」、「なんとか売りたい河出文庫」といった風変わりなフェアや「本屋のオヤジのおせっかい 中学生はこれを読め!」など、面白い仕掛けがたくさん。絶妙なキャッチコピーにつられて、ついつい興味のなかった本にも手が伸びてしまう、なんてお客さんも多いのではないでしょうか。



 同書で紹介されている本屋の店主の方々は口を揃えてこう言います。

「本屋を誰もが集まれる場所、人と人がつながる場所にしたい」



 たしかに町の本屋には、本との出会いだけでなく、人との出会いを大事にする「あたたかさ」のようなものがあります。ケトル4月号はその温度を、じんわり伝えてくれています。