熊本の国立小学校に勤めていた教員が、職場でパワーハラスメントを受けて自殺したようだ──。編集部への情報提供をもとに関係者たちに取材すると、学校内で先輩教員からの行き過ぎた指導が横行していたことや、教員が亡くなった原因がきちんと調査されていないことが明らかになった。全国の公立校の“手本”となるべき国立校に深く根を下ろす、病巣の実態とは。
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「熊本大学教育学部附属小学校(以下、附属小)でパワハラが原因とみられる教員の自殺があったが、実質的に隠ぺいされている。教育界の闇を改善してほしい」
本誌に対し、怒りと失望をにじませてこう訴えたのは、附属小の内部事情に通じているA氏だ。パワハラを受けて亡くなったと問題視されているのは、当時40代だった元教諭Bさん(男性)。一昨年4月に附属小に赴任し、その翌月亡くなった。附属小勤務は初めてとはいえ、教員歴は15年以上のベテランだった。
Bさんの死の原因は公表されておらず、それがA氏が疑うように「パワハラによる自殺」だったことを直接示す証拠や証言はない。
Bさんの妻をはじめとした遺族は本誌の取材に対し、「お話しすることはありません」と沈黙している。附属小関係者の口も重く、ある教員は学外の友人に「Bの死は職場では突然死のように扱われている」と語ったものの、何があったのかは濁したという。
だが取材を進めると、「自殺だったというのは周知の事実」「附属小では長時間労働やパワハラが蔓延している」という話が出てきた。
「B先生は周囲の教員に『睡眠不足』『眠れない』などと漏らしていた」
「亡くなる数日前には教卓に伏せて寝ていて、担任のクラスの児童が心配していた」
との証言もあった。
Bさんの高校の同級生は、「訃報を知って同級生一同驚きました。3人の子どもをもうけ、家も建て、穏やかな生活を送っていると思っていたのに」と話す。
「Bは大人しく、とても真面目で優しい人間でした。以前ホームセンターで会ったときは、当時の赴任先で顧問だった野球部のために飲み物などの買い出しをしていました。夫婦で教員だったので、奥様は余計ショックでしょうね」