人口増加が著しいアフリカは、小麦の輸入をロシアとウクライナに頼っている。ウクライナ戦争が長期化するなか、食料依存も深刻な問題だ。日本貿易振興機構(JETRO)アジア経済研究所上席主任調査研究員・平野克己さんが解説する。

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 私の試算では、2080年代に世界の人口の半分はアフリカ人になります。一地域にこれほど人口が集中するのは人類史上初めてです。

 アフリカは子どもの人口比が非常に高く、経済成長には不利。高齢化の日本とは逆です。アフリカ最大の輸出品である原油の価格が上昇しないと、2.5%の人口増加率を超える経済成長は起こりません。いまだに人口の半分以上が農村部にいますが、穀物の生産性は世界最低で都市を養えない。穀物輸入は人口増加と共に拡大してきて、現在アフリカは世界最大の穀物輸入地域です。なかでもロシアとウクライナからの小麦輸入が大きい。

 ロシアとウクライナは特に今世紀に入ってから対アフリカ輸出を増やしてきました。ロシア小麦のほぼ4割はアフリカ向けです。そこに、ウクライナ戦争が起きた。米ロの関係では軍事面が注目されていますが、人口増がもたらす食糧依存はさらに深刻な問題です。

 アフリカの食糧生産も伸びてきてはいますが、それは主に耕地拡大によるもの。耕地を増やすには労働力が必要で、そのことがアフリカの出生率が減らない背景にあります。アフリカの複婚比率は全体で20%を超えており、大衆的レベルで一夫多妻制が存続し、児童労働が日常的に定着しています。我々とは異なる社会編成原理を有しているから、国連が予想するようには出生率が低下していかないのです。アフリカ農業の最大の問題は水資源が乏しいことで、1950年時点から人口が5倍増した今、食糧自給化は実現が難しい。

 人口分布がアフリカに集中し、いわば人類がアフリカ化していくことの問題を、いま我々はウクライナ戦争で垣間見ています。この危機を持ちこたえるには貿易の安定と拡大が必要ですが、ロシアはそれを“人質”にとっているわけです。

週刊朝日  2023年3月10日号