今川義元をモデルにしたキャラクター「今川さん」
今川義元をモデルにしたキャラクター「今川さん」

 佐多さんは2012年のNHK大河ドラマ「平清盛」から、「麒麟がくる」や「鎌倉殿の13人」、そして「どうする家康」などに風俗考証として関わってきたが、ここ数年変化が大きくなっているという。それは正確性と緻密さが求められることだ。その背景にはテレビ画像の高精細化に加え、インターネットの発達で史料を調べたり、SNSで大河が話題になったりすることが多くなったこともある。

「『麒麟がくる』のときです。オンエアを32インチの自宅のテレビで見たら、衣装の布や絹の織り目まではっきり見え、ここまできれいに見えるのかと思いました。僕らはオンエア前に試写用DVDで見ていましたが、その差に驚きました。だから、綿密に考え話し合わないといけないと、さらに力を入れたことがあります」

 そういう経験も踏まえ、「鎌倉殿の13人」では小栗旬が演じた北条義時の衣装は、緑をベースに色や素材を少しずつ上質なものにし、位が上がっていくことを視覚的にも伝えようとした。

 同時に佐多さんは大河ドラマの視聴者層の変化も感じている。

「昔はテレビを見る家族の中に、年配の人もいたからストーリーの流れや台詞に『あれ、何』と聞いたら教えてもらうことができたと思います。家族構成が変化し大河視聴者の世代が若返っているので昔のやり方だと台詞や舞台などが理解できにくくなっています。だからわかりやすく再構築しないと、視聴者がついていけないという事態が起きるように感じます」

 とくに台詞に関して大和言葉を入れれば、昔風になるかもしれないが、伝わるかというと微妙だ。

「史実に忠実か、エンターテインメント性を高めるかの差配が脚本家の方や演出側の手腕にかかっているのでしょうね」と佐多さん。

「どうする家康」はエンターテインメント性が高い大河ドラマともいえる。史実との釣り合いを、どうする? 視聴者の審判はいかに!?(本誌・鮎川哲也)

週刊朝日  2023年2月17日号