環境緑花工業の植物工場(同社提供)
環境緑花工業の植物工場(同社提供)

■自分のキャリア豊かにする副業

 都会の人材と地方の中小企業を副業で結びつける人材紹介はさまざまある。前出のAさんやBさんも利用したのが、リクルートが2014年から始めた「サンカク」という人材紹介事業。サンカクグループ責任者の古賀敏幹さんは、副業の人材紹介で力を入れているのが、地方に貢献できる「ふるさと副業」と話す。

 古賀さんによると、ひと昔前の副業は、お小遣い稼ぎだった。10年代に入ると、「本業で満たされないとか、自分のキャリアを豊かにすることが注目されるようになった」という。ただ、地方出身で東京など都会で働く人が、UターンやIターンすることは難しいことが少なくない。

 ふるさと副業についてリクルートが20、21年に意識調査すると、全体の過半数以上は興味があると答え、意欲がある人も含めると全体の7割以上を占めた。古賀さんは「副業に興味がある層では、自分のふるさとに興味が高い」と言う。

 一方、コロナ禍でリモートワークが広がり、政府も副業を推奨するようになった。副業の人材紹介事業には追い風と古賀さんはみている。会社側も従業員の技能向上などで、「副業制度を導入する考え方が出始めている」と古賀さんはみる。

 会社が副業を禁止すると、従業員の不満が高まり転職したり、就職先に選んでもらえない流れができつつあるという。副業を認めて従業員が定着してくれるように、会社が魅力的でないといけない時代を迎えている。

 古賀さんによると、北陸の老舗和菓子店がネット販路の開拓担当を副業で雇い、ネットの売り上げが20倍近く拡大したケースもある。

 一方、地方には特有の難しさもある。古賀さんは「よそ者の人材会社がアドバイスすることに、聞く耳を持ってくれないことがある」と話す。地元協力者に営業をお願いするなど、「伝える努力が相手の意識を変える」とみている。

 都会の副業者がうまく協力できると、地方の中小企業には大きな戦力となる。両者がうまく理解しあい、全国の仕事現場が変わっていくかもしれない。(本誌・浅井秀樹)

週刊朝日  2023年2月10日号