東尾修
東尾修

 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、プロ野球のクライマックスシリーズのファーストステージを振り返る。

【写真】阪神の矢野燿大監督とDeNAの三浦大輔監督

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 プロ野球はポストシーズンが始まり、クライマックスシリーズのファーストステージはセ・リーグは3位の阪神が敵地・横浜でDeNAを2勝1敗で下し、パ・リーグは2位のソフトバンクが3位の西武に連勝して、それぞれファイナルステージに進んだ。

 ファイナルステージは次回で分析するので、今週はファーストステージについてみていきたい。

 すべて2位チームの本拠地での戦いとなるファーストステージ。3試合制ということで、どうやって2勝するかを考える。そこは最大6試合のファイナルステージ、そして最大7試合ある日本シリーズとは違う。

 セで勝ち抜いた阪神は、短期決戦の戦いを準備した。矢野燿大監督は第1戦でエースの青柳晃洋を無失点ながら6回、85球で迷わず交代した。そしてシーズン中は八回湯浅京己、九回岩崎優としていた2人の順番を入れ替えた。第2戦は0‐1で落としたが、第3戦を3−2で勝ち切った。西純矢を中継ぎに組み込んで、第2戦、第3戦で使った。12球団トップのチーム防御率2.67の投手力を前面に押し出した。

 短期決戦というものは、打線に関しては、やってみなきゃわからない。わずか3試合では、復調しないまま終わってしまう選手もいるし、計算なんてできない。その点、阪神は投手力という強みを持っており、さらにそこに「起用」というスパイスも加え、ロースコアの戦いに持ち込んだ。「奇襲」なのか「正攻法」なのかは関係ない、戦い方が徹底されていたという点に、拍手を送りたい。

 対してパの西武はなすすべなく終わった。第1戦の高橋光成は初回に柳田悠岐を空振り三振にとった縦のスライダーを、2打席目にものの見事に3ランを打たれた。ここで配球うんぬんを議論するつもりはない。あの球を打った柳田が素晴らしい。ただ、1点差まで詰め寄った六回2死満塁。すでに100球近くになっていた高橋から思い切ってスイッチする選択肢を持ち得ていたか。交代するかどうかは、グラウンドで戦うものにしかわからないものがあるが、レギュラーシーズンどおり「信じる」だけでは、打たれた時に取り返しのつかないことになる。第2戦の今井達也も三回に柳田に満塁弾を打たれたが、3四死球で満塁にした打席での一発。絶対に打たれてはいけない打者に打たれては勝てない。

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東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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