大谷のニュースが大好物というコラムニストの桧山珠美さんはこう話す。

「朝の中継やニュースで大谷選手のさわやかな姿を見られなくなると思うとさびしい、と思う人は多いと思います。テレビ出演も少ないですし、オフシーズンの露出はほとんどありません。それがまた、見たい感情をかき立てる。まさに“大谷ロス”です」

 ここまで人々の心を引きつけるのはなぜか。桧山さんは「大谷選手にはみんなの憧れが詰まっているから」と分析する。

「世界最高峰の舞台で活躍する姿は同世代にとってはまぶしく、勇気をもらえる存在でしょう。チームメートや相手チームの選手でさえ笑顔にしてしまうようなナイスガイぶりは、親世代が思わず『うちの息子もこんなふうに』『婿に来てくれたら』と思ってしまう。選手としての能力に人柄と、嫌われる要素がどこにもないんです」

 二刀流を貫く生き方も応援したいと思わせる理由だと桧山さんは言う。

「普通の人は何かをあきらめながら人生を生きています。でも、大谷選手は投手も野手もあきらめず、ひたすらに好きなことをやり続け、しかも結果を残している。そうした生き方に自分を重ねたいと思っている人もいるのではないでしょうか」

 大谷翔平がみんなに愛される理由を象徴するようなシーンが、9月30日のアスレチックス戦であった。この日の大谷は八回2死まで相手打線を無安打に抑える完璧なピッチングを見せ、試合後半はアウトをとるごとに場内は大歓声。「MVP! MVP!」のコールが自然発生的に起きた。

 ノーヒットノーラン達成かと期待が高まるなか、三遊間に飛んだ打球を遊撃手がはじき、内野安打を許す。観衆から大きなため息が漏れたが、当の大谷は捕手に対して自分の制球が甘かったと謝るようなしぐさを見せ、遊撃手には笑顔を見せた。

 ふてくされるでも、落胆するでもなく、気遣いを見せる。そんな姿勢が人々をたまらなく魅了するのだ。

「見る側もリラックスしながら笑顔で応援できる。天性の明るさは、昨今の暗い世相の中、一つの光だと思います」(桧山さん)

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