林家たい平(はやしや・たいへい)/ 1964年生まれ。埼玉県出身。87年に武蔵野美術大学造形学部を卒業、翌年、林家こん平に入門。2000年真打ち昇進。独演会を中心に、全国での落語会のほか、テレビ、ラジオにも多数出演。番組レギュラーに、「笑点」(日本テレビ系)大喜利メンバー、「新 鉄道・絶景の旅」(BS朝日)ナレーター、「ゴルフ天下!たい平」(BSテレ東)など。(撮影/写真映像部・高野楓菜)
林家たい平(はやしや・たいへい)/ 1964年生まれ。埼玉県出身。87年に武蔵野美術大学造形学部を卒業、翌年、林家こん平に入門。2000年真打ち昇進。独演会を中心に、全国での落語会のほか、テレビ、ラジオにも多数出演。番組レギュラーに、「笑点」(日本テレビ系)大喜利メンバー、「新 鉄道・絶景の旅」(BS朝日)ナレーター、「ゴルフ天下!たい平」(BSテレ東)など。(撮影/写真映像部・高野楓菜)

「自分を妖怪にたとえさせるんです。妖怪の名前と絵、生息地とか長所や短所を細かく書かせる。自問自答しながら、自分を妖怪化すると、不思議と短所が長所に変わってきたりして、それまで自分のことが嫌いだった学生が、『あれ? 自分、結構かわいいじゃん』みたいに思えるものなんです(笑)。今、僕が担当している学生は50人いるので、50人分全部コピーして渡すと、妖怪図鑑ができあがる。それを見ると、自分だけの悩みだと思っていたことが、友達と一緒だったり。お互いの長所だけじゃなく短所も受け入れることができて、それぞれ認め合えます。僕は、授業といっても、お金をいただいているからには、やっぱり喜ばせてあげなきゃいけないよな、という使命感を感じてしまう。だから、知識を得たり、自分や友人を好きになれる喜び以外にも、最近は、食べ物で釣ったりしています(笑)。授業が1限で、ご飯を食べないで来る学生もいっぱいいるので、みんなにお菓子を渡して」

 たい平さんが、日常の中にある幸福なもの、美しいもの、楽しいことに敏感になったのは、高校のときの美術の先生の言葉があったからだ。

受験のときに言われたんです。『毎日良い映画が見られるわけじゃない。毎日素晴らしいお芝居が見られるわけでも、毎日美術館に行けるわけでもない。だからこそ、何げないものに感動する心を養いなさい。空に浮かぶ雲や、道端に咲く花を見ては美しいと思える、そういう心を養っておきなさい』と。その先生の言葉はずっと心に残っています」

映画「でくの空」は29日からユナイテッド・シネマ ウニクス秩父で先行公開。8月26日からアップリンク吉祥寺ほか全国順次公開(c)2022 チョコレートボックス合同会社
映画「でくの空」は29日からユナイテッド・シネマ ウニクス秩父で先行公開。8月26日からアップリンク吉祥寺ほか全国順次公開(c)2022 チョコレートボックス合同会社

(菊地陽子、構成/長沢明)

週刊朝日  2022年8月5日号より抜粋