動物園では人気者のツキノワグマ(西海太介氏提供)
動物園では人気者のツキノワグマ(西海太介氏提供)

 夏本番、人気のキャンプに出かけようと計画している方も多いだろう。自然が色濃く残る野山は生物の生息域でもある。アウトドアの楽しい思い出が台無しにならないように、注意すべき「危険な野生生物」について専門家から学んでおこう。

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 山登りやキャンプで出会いたくない野生生物の筆頭は、クマだ。国内では北海道ヒグマ、本州と四国にツキノワグマが生息している。

 クマに襲われ負傷する事故が絶えないが、本来は臆病な性格なので、何より会わないようにすることが原則だ。危険生物のリスクマネジメントを専門とする「一般社団法人・セルズ環境教育デザイン研究所」代表理事の西海太介氏が説明する。

「基本的にクマは人を恐れています。クマが人を襲うのは防衛のためで、突然ばったりと出会って驚いた時です。ですから、鈴を付けたり、大きな声で話したりしてクマに存在を伝えたほうがいい。私は、見通しの悪い山道の手前などでは『ハイ!』と声を上げるようにしています。足跡や糞(ふん)を見つけたら長居しないことです」

 それでもクマと遭遇してしまったら、慌てて背中を見せて逃げてはならないという。死んだふりもNGだ。タケノコや山菜採りの最中は、身をかがめて小さく見えるのでクマの攻撃を誘発させやすいとも考えられている。山菜はクマの好物なので当然出会いやすくなる。西海氏がこう注意を促す。

「クマは逃げるものを追いかける習性があるし、走るスピードは時速40~50キロにも及ぶので、かないません。ゆっくりと後退しながら、その場から離れること。万一のためにクマよけスプレーも用意しておくと安心です」

 一方、クマ側の受難もある。四国では過剰な駆除によって、ツキノワグマが絶滅の危機にある。日本自然保護協会保護・教育部の大野正人部長が解説する。

「現在、徳島・高知の県境にわずか20頭ほどが生息するのみとなっています。クマの胆嚢(たんのう)が漢方薬になるからと狩猟されてきました。また、植林の皮剥ぎ被害を理由に駆除されてきたのです。人工林を自然林に戻すなど保護活動が進められています。獣害を防ぐとともに、クマと共存していくことも考えるべきです」

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