五木:コロナのせいなんです。昔は夜の12時ぐらいから街に出ましたからね。唐十郎が芝居やってる、大島渚が議論してる、あっちのほうで浅川マキがオールナイトのコンサートをやってる、深夜映画、深夜喫茶、みんな夜の12時からの世界だったのが、一昨年あたりからは8時ぐらいに閉まっちゃうんだもの。一人でウロウロしてもしょうがないから、いまは12時に寝て、7時半には起きてますね。

林:前は寝るのが朝だったんでしょう?

五木:そう。「朝日を浴びなきゃいけない。ビタミンDがとれないから」って言われたから、「僕は寝る前に朝日をちゃんと浴びて寝てるから大丈夫」って言ってたんだ(笑)。いまはふつうに朝起きてカーテンを開けてふつうの朝日を浴びてる。

林:先生は、いま旬の人、例えば又吉(直樹)さんとかともご対談してらして、そこで活力をもらってらっしゃるんですよね。

五木:僕は対談をいちばん大事にしてるんです。ブッダという人は、一生涯、講演と対談しかやってないんですよ。お説法というのは講演でしょう。人を集めて話をするわけだからね。問答というのは、いろいろ質問されてそれに対して答えるわけだから、対談じゃないですか。だから対談は大事なんだよね。林さんもこの対談シリーズ長いよね。僕も週刊読売の「真夜中対談」とか、いろんなところで対談のホストをやってました。僕の対談の第1号は井伏鱒二さんだった。

林:井伏鱒二さん! 私がデビューしたとき、まだご存命と聞いて、文藝春秋の人に「色紙もらえませんかね」って言ったら、「ダメです」って言われたことがありますよ(笑)。

五木:林さんは本屋の娘さんだから、子どものときから文学者の名前とかに親しみがあったでしょう。

林:はい。だから五木先生とかにお目にかかれるときは本当にうれしくて。だって、私がハタキをかけてた方々と会えるんですから(笑)。

五木:アハハハ。そういえば昔の本屋さん、ハタキをかけてたよね。いつの間にか自分もハタキをかけられるようになっちまった(笑)。

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