ネロンガ (c)2021「シン・ウルトラマン」製作委員会 (c)円谷プロ
ネロンガ (c)2021「シン・ウルトラマン」製作委員会 (c)円谷プロ

 清水さんは、自身の連載記事のため、成田さんの最晩年に何度も取材を行い、その後の交流を通して、遺稿集の編さんや、没後の企画展の手伝いなども行ってきた。清水さんが、ウルトラマンのデザインについてこう語る。

「成田さんは、『ウルトラマン』のメイン脚本家だった金城哲夫さんから、『いまだかつてないカッコいい宇宙人を作ってくれ』と依頼されたそうです。人間の持つ余分なディテールをそぎ落とし、シンプルにしていった結果、生まれたデザインです。根底にあるのはギリシャの哲学者プラトンの考え方。怪獣は混沌、カオスを意味する存在であるのに対し、ウルトラマンはプラトンが理想とした秩序、コスモスを象徴する存在。そこに生命感を込めたとおっしゃっていました」

 今回、新たに描き出されたウルトラマン像については、次のように感想を語る。

「人間が進化して意識も向上したときにたどりつけるような普遍的な美の形、ギリシャ美術由来の人間の理想形のようなものが込められていると感じます。仰ぎ見る宇宙の神像、心の指針のような一面もあると思います」

 最後に、読み解いておきたいのが、ポスタービジュアルなどに書かれている、

<そんなに人間が好きになったのか、ウルトラマン。>

 という言葉だ。これは、初代ウルトラマンの最終回で、ゾフィーが光の国へ帰る前のウルトラマンに向け語ったセリフと同様のものである。

「特報映像で斎藤工さんが読んでいた本、『野生の思考』は、ザツに言えば、文明が発達したヨーロッパ人たちには、科学が発達する以前の未開の状態で生きる人々から学ぶべき部分もあるという内容のものです。外星人、ウルトラマンという高度な知性体の視点から見た人間は、未熟な存在である。その視点から、我々は好きになってもらえる資格があるのか、あるいは逆に外星人を好きになれるのか。そんなテーマが描かれた作品となるのではないでしょうか」(氷川さん)

 完成した作品には、さらなる驚きが込められていそうだが、キャッチコピーで示される、<空想と浪漫。そして、友情。>が満載の作品であることは間違いなさそうだ。

「映画館を出たときに、世界が少し変わって見えるような作品になることを期待しています」(同)

(本誌・太田サトル)

週刊朝日  2022年5月6・13日合併号