コロナ禍で医療への注目は高く、国公立大医学部の人気は健在だ。多くの合格者を出す高校を取材した。
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「今の若者は仕事を選ぶ際に社会貢献できるかどうかを重要視する傾向にある。コロナ禍で医療現場がクローズアップされたことで、医学部を志望する学生が多いです」
私立医学部・歯学部専門の予備校、メルリックス学院の鈴村倫衣(みちえ)・学院長はそう解説する。
さらに、働き方改革で2024年度からは医療現場で労働時間の上限規制が設けられる。医師の勤務環境を改善し、時間外労働時間を減らそうとする動きも医学部の人気を支えると見られる。
「今後も医療現場の人手不足が予想されますし、国民皆保険制度が続く限り、医学部人気は当面続くのではないでしょうか」(鈴村さん)
医学部に強い高校はどこか。なかでも人気の国公立大医学部の現役生合格者ランキングを見てみよう。
私立では、現役と既卒生を合わせた総合ランキングで15年連続トップの東海(愛知)が、現役でも最多となる78人の合格者を出した。
2位の久留米大附設(福岡)、3位の東大寺学園(奈良)など、ランキング常連校が上位に並ぶが、注目したいのは現役合格率(卒業生に対する現役合格者数の割合)だ。上位3校が2割前後のなかで、32%と高い数字を誇るのが北嶺(北海道)だ。
北嶺は中高一貫の男子校。ひと学年120人前後と、私立ランキング内でひときわ小規模さが目立つ。教頭兼進路指導部長の郷頭(ごとう)竜也さんが言う。
「学校説明会では『日本一小さい進学校です』と言っています。生徒全員の志望大学、成績状況を把握でき、それぞれに合った進路指導を効果的に行えるのも、学生数が少ないからこその魅力だと考えています」
同校は18年に「北嶺メディカルスクール」を設置した。毎月、医師を呼んで講演会を開くほか、道内の病院や診療所に研修に出向くなど医療体験を重視する。コロナ禍の影響で今年の卒業生は実現が難しかったが、例年、学生たちの医学部志望を強くし、将来像をより具体的にさせるきっかけとなっている。