現役と既卒生を合わせた数字で桜蔭(東京)、豊島岡女子学園(東京)に次ぐ3位に入った四天王寺(大阪)は前年と同じ25人が現役で合格した。進路指導部長の曳野康久さんは言う。

「不正入試発覚後に志望者数が大きく変わったということはありません。今年は共通テストの難化もありましたが、そうした影響をいろいろと考えるのは教師側だけで、生徒は例年と変わらず、勉学に励んでくれました」

 自ら進んで学び、考えて行動するといった自主性を重んじる校風。この2年間はコロナ禍の影響で、大阪大や京大医学部へのツアー、四天王寺病院の見学といったキャリア講座を中止せざるを得なかったが、生徒たちは「自分たちの高校に限らず、みなに平等に訪れている」と冷静に受け入れていたという。

◆難題をテーマに医学部生と議論

 同校は14年、中学に少人数制の医志コースを設置。今春、3期生が卒業した。30人に満たない編成で学習進度も速く、進学実績を引っ張っている。

湘南白百合学園提の集団面接の練習の様子(同校提供)
湘南白百合学園提の集団面接の練習の様子(同校提供)

 9位の湘南白百合学園(神奈川)は、昨年は医学部志望者数が少なかったことから合格者がいなかったが、今年は計9人が合格した。同校が重視するのは「多様性」。中学・高校の6年間、文理分けしないのもその一環だ。教頭兼広報部長の水尾純子さんはこう説明する。

「クラスの中に文系私大の志望者、美大や音大の志望者などが混在しています。多様な価値観を知り、互いを尊重する精神が育まれます」

 長期休暇中には医学部講座を実施。現役の医学部生とともに、答えのない課題にグループで向き合い、考え、議論する。中学1年から受講でき、講座を増やすほどの人気だという。

「テーマはたとえばトリアージについて。年齢も性別も異なる人たちがある条件下でけがを負っていて、という仮定の下で、誰を優先して医療行為を行えばいいのか。答えは誰もわかりませんが、実際の現場では一歩の遅れが生死を分けます。こうして医者の仕事を実感してもらいます」(水尾さん)

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